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ねつ造記事で“ピュリッツァー賞”を授賞!? 有力紙の一流記者も騙された“フェイクニュース”はどのようにつくられたのか

『ニュースの未来』より

2021/09/06
note

 彼らは一見すると、その世界のことを知っている人でないと知りえないような細かな情報を盛り込み、信じ込ませていくのです。その延長戦上にディテールを描けば、フェイクであっても本当だと信じ込ませることができるという技法があります。ニュースの方法を悪用していけば本当らしいデマも自由自在に操ることができるのです。

お金儲けにばかり関心が向かうケースが多い

 今のところ、フェイクニュースは騙すほうに大した力がなく、すぐに見破れるようなわかりやすいものばかりで、お金儲けにばかり関心が向かうケースが多い。しかし、本当に力を持ったプロの「嘘つき」たちが本格参入してきたらどうでしょうか。あるいは方法を研究し尽くした組織が参入し、お金より社会を騒がすことに快楽をおぼえる人が多くなったら……。問題はもっと厄介になるでしょう。

 繰り返しになりますが、方法自体に罪はありません。ガルシア= マルケスに限らず、ニュースの世界では1950年代~70年代にかけて新しい方法論が生まれ、様々なジャンルに影響を与え、作品に結実してきた。そんな時代だったのです。

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 しかし、そうした新しい方法は「ジミーの世界」のように、ディテールに宿る力を悪用することで歴戦の記者をも騙し切り、賞を取るような「フェイクニュース」も生みました。

 インターネットという技術的な問題にだけ注目すればいかにも新しい問題ですが、人は次の技術が生まれればそれに乗っかり、巧妙かつ新しいフェイクニュースを作り、流していくのです。

ニュースの未来 (光文社新書)

石戸 諭

光文社

2021年8月17日 発売

ねつ造記事で“ピュリッツァー賞”を授賞!? 有力紙の一流記者も騙された“フェイクニュース”はどのようにつくられたのか

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