新型コロナウイルスのワクチン接種で世界最先端をゆくイスラエル。「文藝春秋」では、イスラエル政府のコロナ対策の最高責任者であるサルマン・ザルカ(Salman Zarka)博士に、日本メディアとして初めてインタビューに成功した。
国民の1割以上にあたる100万人もの感染者を出したイスラエルは、「マゲン・イスラエル」(ヘブライ語で「国家の防御」の意味)というプロジェクトを展開してきた。世界に先駆けて昨年末からワクチン接種を開始し、16歳以上の約80%が2回目接種を済ませている。その結果、今年4月にはマスク生活が終わり、死亡者数ゼロの日が続いていた。
ところが7月以降、デルタ株の侵入によって1日あたり約8000~1万人レベルの感染者を出すようになり、死者数も激増してしまった。
そこでイスラエルは、ワクチンの3回目接種(ブースターショット)に踏み切った。ザルカ博士は、ワクチン3回目接種の意義をこう強調する。
「前例はなく、副反応のリスクについても未知数でした。それでも感染状況が急拡大していることから、60歳以上の高齢者より3回目接種を行うこととしたのです。すでに180万人以上に3回目接種を実施済みですが、今のところこれといって大きな副反応は報告されていません。今後も副反応の状況を見つつ、感染防止効果と重篤化予防効果を確実にするために、3回目接種を進めていきます」
日本では中等症の患者が自宅療養を余儀なくされ、入院できずに亡くなる人も多い。だが、ザルカ博士によると、イスラエルでは「自宅の病院化」(ホーム・ホスピタリゼーション)というイノベーションによって、こうした危機を未然に防いでいるという。