携帯電話は災害と困窮の最強支援ツールであり、何をおいても必要なものとなっている。外部の支援団体などに連絡すれば、命や暮らしを守れるからだ。生活が困窮しているなら携帯電話を解約すれば利用料金を節約できるではないか、という考えは決定的な誤りである。
携帯電話の重要性は年々高まっており、相談者の多くがネット情報をスマホで見て連絡してくる。私たちの支援活動もSNSやメールを通じてのやり取りが多い。スマホがない暮らしを想像するだけで恐ろしいことである。
携帯電話やインターネットは生命線
コロナ禍では、携帯電話会社が利用料金の一定の支払い猶予を設けており、条件や猶予期間は事業者によって異なる。契約者からの申告がなければ適用されないので、契約している事業者へまずは問い合わせてほしい。
住居や水道など、人間が生きていくのに必要なものは公共財として民間企業に渡さず、共同管理(コモン)の一環として自治体が運営していくべきというのが私の持論だが、携帯電話やインターネットも、それらと同様の生命線ではないか。
菅政権のいいところを挙げるとすれば、大手通信キャリアに働きかけて一気に通信料を引き下げたことだ。世界でも突出して高かった日本の通信料は、ようやく米英などの先進国並みとなった。
今後も可能な限り、政府はこれらの企業に働きかけを行い、生活必需品は安価で提供されるように、あるいは商品化の度合いを引き下げていくように注力するべきだ。女性の生理用品がトイレットペーパーと同様、学校などの公共施設に常備されていくように、無償配布するものを増やす政策を歓迎したい。
〈事例〉水商売で生計を立てる「虐待サバイバー」にコロナが追い打ちをかける
給料が生活費に届かず、副業で水商売をする女性からの生活相談は日に何件も届く。就職しても非正規従業員だったり、給与水準が抑えられたりしているからだ。
飯村奈津さん(仮名・33歳)は、夫からのDV(ドメスティック・バイオレンス)が原因で離婚し、都内のキャバクラで働くようになった。昼に寝て、夜に出勤する、昼夜逆転生活が始まる。時間給も高く、その日のうちに給料が出る日払いなのもありがたい。
はじめは救われた気分で働いていたものの、次第に夜眠れなくなった。夕方からの出勤で昼夜逆転生活になってしまい、体内リズムがおかしくなったのだろう。好きでもない相手に疑似恋愛を仕向け、笑ったり酒を飲んだりするサービスが、日常生活に支障をきたすような乖離状態を引き起こす。