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「僕、泣きそうになりました」ベイスターズ・田中健二朗32歳、復帰登板で見せた生きざま

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/09/21

全く新しい田中健二朗になって戻ってきた

 そんな彼にとっての野球人生最大の転機は甲子園優勝でもなければ、ドラフト1位指名でもなく、オールスター選出でもなく、日本シリーズ出場でもビール掛けでもなく、2019年8月にに左肘内側側副靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受けた事ではないかと私は思っている。

 当然、年齢も中堅に差しかかるタイミングで大手術を行うのだから自分が今まで築き上げてきたポジションもフラットになるどころかマイナスになる可能性だってある。相当な意思決定であったはずだ。

 しかし、この先の野球人生を考えた時に納得がいくまで長く続ける為にはコンディションは必須条件になる。術前よりも人間としても、野球選手としてもレベルアップが出来るチャンスがある。そういう意味で彼は良い選択をしたのではないかと思っている。

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 当然、選択が間違っていなかったことを証明する為にも彼は想像もできないほどの努力を積み重ねてきたであろう。勿論、家族や周りのサポートがあっての復活劇であったのは間違いない。しかし、それよりも一番大きいのは自らの選択を自らで乗り越えたことだ。

 その絶え間ない努力を近くで見てきたからこそ、ベンチで健二朗を見守る三浦監督と木塚投手コーチの表情、彼に携わったであろう全ての人の顔を思い浮かべると胸が熱くなる。

 モニター越しで見る彼の身体は一回りも大きくなり、球威は術前よりも増していた。以前の田中健二朗ではなく、全く新しい田中健二朗になって戻ってきた。ファンの方々は幾度となく「ここでタナケンがいれば……」と思うシチュエーションがあったのではないだろうか。スタートラインに戻ってきた。ますます期待をしてしまう。

「おかえり」

 三浦監督と同じ言葉を送った。

「兄さん、ありがとうございます!!」

 逞しくなった弟が帰ってきた。

(注1)プライムカメラのコンテンツにはブルペンカメラは含まれておりません

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