文春オンライン

2021/09/26

 さらに、これまでの菊池は、どちらかというと背中で語るタイプだった。「目で盗め」と言わんばかりに、自分の練習している姿を近くで見せて、あまり直接言葉で指導することは多くなかった。

「自分の感覚を言葉にするのは難しいと感じる」と『二塁手革命』(光文社)で語っていたように、プレーを口で説明することはあまり得意としていなかったのだろう。でもそれは昔の話。「体が勝手に反応していた」としていたところを、今は改めて身体の仕組みを理解して、使い方をしっかりと意識ながらプレーできるようになった。昨季の守備率10割という驚異的な記録もその結果だろう。だからこそ、後輩たちへ言葉で伝えられるようになったのだ。

息子にプレーする姿を見せるために

 昨年からコロナ禍というのもあって、シーズン中は全く会えていない。連絡も森下暢仁とお立ち台に上がった時、オールスターでMVPに選ばれた時、オリンピックで金メダルを獲った時など、たまにLINEするくらいだ。

「お前も成長したな」

 遥か先を行く菊池にそう言ってもらいたくて、あれこれしてきた。

 これまで助手席に乗せてもらうことばかりだったのだが、数年前にペーパードライバーを卒業したことを伝えると、運転する車に乗ってもらう機会が訪れた。

「いや、ハンドルの握り方10時10分って! 教習車か!」

 ……そう簡単には褒めてなどもらえない。

 先日も久々に東京ドームでカープ戦を現地観戦したら、本塁打含む4安打4打点と大活躍。試合後に「最後、ホームラン狙ってる気がしました」とウキウキで送ったところ、「狙ってねーわ!」と返ってきた。やはり、認めてもらえる日はまだまだ遠そうだ。

左から桝本壮志(以下敬称略)、筆者、梵英心(現オリックス打撃コーチ)、菊池涼介、山本圭壱(極楽とんぼ)、大江健次(こりゃめでてーな)、尾関高文(ザ・ギース) ©森田和樹

 そんな自分でも、これだけは確かにわかることがある。今は苦しい時期だが、強いカープを誰よりも望んでいるのは菊池なのだ。後輩たちへの指導もそのためにしていること。メジャーに行くという道もあった中でカープに残ることを選んだからには、ここを乗り越えて、もう一度優勝争いできるチームを作り上げてもらいたい。

 そういえば、2018年に放送された優勝旅行特番で「現役を子供に見せてあげたい」と話していた。1歳になった息子も物心がつくまではもう少し時間がかかるだろう。そのときまでカッコいいパパでい続けなければならない。きっとパパの活躍をしっかりと息子の記憶に刻ませてくれるはずだ。そして、それは優勝の輪の中にいる姿だと信じている。

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