もちろん「申しわけありません」とお詫びするんですが、すると別の商品を大量に抱えてレジに来て、政府のコロナ対策とかの世間話が始まる。そこから自分の息子が高学歴という自慢話になり、「きみたちも本当はこんなところで働きたくないだろうけど、コロナだからしょうがないよね」とコンビニ店員をバカにするのがパターンです。
わざとクッキーを落として割る「クッキー割りおじいちゃん」
──なるほど。このケースは迷惑なうえに腹が立ちますね。
松本 その人の息子の学歴がどうだろうと私たちには関係ないですからね。でも、「シブタニ」のおじいちゃんもそうですが、たぶん話し相手がいなくてさびしいんですよ。高齢者でも女性なら近所の人と井戸端会議する機会があるのかもしれませんが、おじいちゃんには話す相手もいない人が多い。そうした孤独感をまぎらわすためにコンビニに来るんだと思います。
──もうひとりの「クッキー割りおじいちゃん」もそのパターンですか。
松本 そうですね。このおじいちゃんは、店にくるたびに陳列してあるクッキーを床に落として割っていくんです。本人は店員に見られていないと思っているんですけど、こちらは落とすところをちゃんと見ているので、「お客さま」とお声がけするんですよ。すると「誤って落としてしまった」とミエミエの言いわけをしてごまかそうとする。
常習犯だったので家族に連絡して商品を買い取ってもらったんですが、迎えに来た家族がおじいちゃんをいかにも厄介者扱いしていて冷たかったんですね。家族に相手してもらえなくて、話し相手もいなくて、それで「クッキーを落として割る」という子どもみたいなイタズラをするようになったんでしょう。ちょっと哀しくなりました。
店内で店員にたばこの火をつけさせる
竹原淳平さん(仮名、35歳)は、都内のファミリーマートで週5日、深夜のシフトに入っている。深夜のコンビニは早朝や夕方などに比べて空いているが、店員の仕事はとても忙しいという。納品作業、雑誌類の検品、調理器具の洗浄と、やるべき作業が山積みのうえに、次々と迷惑な客が舞い込んでくるからだ。
──迷惑な客というのはどんな人たちなんですか。
竹原 うちの店舗は繁華街のターミナル駅からけっこう近い場所にあるので、ホステスや風俗嬢、ガラの悪い男性など、とにかく一筋縄でいかない客が多いんです。最近びっくりしたのは、30代前半ぐらいのいかにも水商売風といった女性客ですね。