工藤會排除に多くの市民が協力
福岡県の暴力団の「縄張り」(勢力範囲)を各暴力団は明確に遵守している。山口組も工藤會の縄張りを尊重している。だから、工藤會は他団体を気にすることなく、北九州地区の利権掌握に努めればよかった。それが工藤會が暴走したもう一つの要因だ。
だが、今回判決が下された元漁協組合長殺人事件のご家族らのように、工藤會の卑劣な暴力に対し、多くの市民、事業者がノーを突きつけた。平成24年8月に始まった暴力団員の立ち入りを禁止する暴力団排除の標章を、北九州市の該当店舗の7割以上が掲示してくれた。それまでみかじめ料を払い続けた建設業者の皆さんは、拳銃を撃ち込まれても工藤會の要求を拒否した。だからこそ、追い詰められた工藤會はテロとも言える事件を繰り返したのだ。
全国初となった総合的暴力団排除条例を福岡県が制定したのも、工藤會の一連の襲撃事件が最大の理由だ。工藤會は全国暴力団に多大なる悪影響を与えたのだ。だが、それを公然と非難する暴力団組織はどこにもいない。暴力団に逆らうとどんな酷い目に遭うか、それを工藤會が示してくれたからだろう。
今、工藤會が本拠を置く北九州市は全国の政令都市で最も安全な街と言って良いだろう。それは警察の力だけではない。福岡県、北九州市などの行政、そして何よりも工藤會の卑劣な暴力に屈しなかった市民、事業者の皆さんの地道な努力の成果だ。だが、工藤會組員の多くはこれからも工藤會にしがみつき、違法・不当な活動を続けていくだろう。
工藤會ほど追い詰められた暴力団はかつてなかった。全国で暴力団排除条例が施行された平成23年末、約3万2700人だった暴力団員は大幅に減少している。昨年末現在、全国の暴力団員は約1万3300人だ。だが彼らは、工藤會のように市民や警察に牙を剝く必要などない。敢えて暴力に訴えなくても、それなりに必要な資金を得ることが可能だからだ。
暴力団はこれからもその数を減らしていくだろう。だが、社会にはまだまだ彼らが生きていくだけの隙間が存在する。暴力団壊滅、未だ道半ば、そしてゴールはまだ見えない。工藤會は特別ではない。表向き任侠団体を標榜し、実際は持続的かつ暴力的犯罪集団である暴力団の真の姿、それをより多くの方に知っていただきたい。