退任が決まった菅義偉首相だが、8月末に行われた「文藝春秋」の最後のインタビューでは、安全保障戦略の見直しについても語っていた(聞き手は、アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長の船橋洋一氏)。
菅首相はまず、外交的な成果について次のように答えた。
「やはり安倍政権の外交の成果は、極めて大きいものがあったと思っています。その流れで、私自身が総理大臣になっても、各国の皆さんが非常に丁寧に接してくださった。最初にベトナムとインドネシアを訪問してASEANとの連携を確認し、その後に訪米しました。バイデン大統領の就任後、最初の外国首脳としての訪問でしたが、大変歓迎していただきました。それは日本がアメリカにとって極めて大事な同盟国であるからに他なりません」
近年、領土的な野心を隠そうとしない中国が大きく台頭し、東アジアの安全保障環境は風雲急を告げている。菅首相は、この情勢をどう見ているのだろうか。
「近年の中国の軍事面や経済面での動向も従来とは異なってきており、東アジアの安全保障環境も非常に変化してきていると考えています。経済安全保障面での対応の強化、サイバー分野への対応、あるいは『自由で開かれたインド太平洋』構想の推進などの新たな動向について各国首脳とも話し合う機会が増えました」
その上で、菅首相はこう踏み込んだ。
「私としては、こうした新しい動きに伴い、策定からまだ七年半ではありますが、現行の国家安全保障戦略を時代の要請を反映するよう見直しをすると同時に『防衛大綱』や『中期防衛力整備計画(中期防)』の見直しにも早急に着手すべきではないかと考えています」