多分、彼らのファーストインパクトが強過ぎたので、その存在自体に慣れ時間が必要だったのだと思う。
あるときから、玉置浩二の声やバンドの音からやさしい「ため息」を感じるようになった。素晴らしいね、“ふぅ”。悲しいね、“はぁ”。そんな、喜怒哀楽の後に自然と出る息。
今ではその歌声に癒されている。
頭がパンパンになっていると、息を吐くことさえ忘れてしまう。頑張り過ぎたとき、安全地帯を聴いてホッとするのは、深呼吸の「呼」の大切さを思い出すからかもしれない。
玉置浩二というカリスマを支える才能集団
玉置浩二は祈るように両手でマイクを抱え、それを食べてしまいそうな勢いで歌う。そんな彼を見て、いつも思うのだ。お腹の中にいろんな色の音符が溜まっていて、定期的に吐き出しているのかも。彼が歌の途中に挟んでくる
「トゥルールン、ララン……ヘイ~エイエイ♪」
という自由なスキャットは、歌うというよりエネルギーが自然に出ているようだ。
このエネルギーを、彼と共に美しい言葉や音にするのが、作詞家・松井五郎をはじめとした共同制作陣、そして安全地帯のメンバーである。素晴らしい才能が、休憩を挟みながらも天才のそばにい続ける。その在り方に、気まぐれな自然を恵みに変えるスゴ腕農家、もしくは薬草を探すのが好きな魔法使いの集落っぽさを感じるのである。
玉置浩二のソロ曲は、「田園」「行かないで」「氷点」やアルバム「カリント工場の煙突の上に」「JUNK LAND」など、命を振り絞って歌っている感じがする。
玉置のソロ曲を安全地帯がセルフカバーしたアルバム「安全地帯XIII JUNK」も素晴らしい。ボーカルは同じ玉置浩二なのに、違った趣があってとても興味深い。特に「All I Do」はヒリヒリとした透明感のあるソロバージョン曲に比べ、安全地帯バージョンは、ほんのりと丸くて懐かしい。全然違う曲に聴こえる! 間奏のギターの哀愁も「ああ~なるほど! ああ~やっぱり安全地帯最高!」と勝手に納得し、勝手に口元が緩んでしまった。
ギタリスト・矢萩渉の歌声も凄い
意外な角度から私のハートを射止めた安全地帯メンバーもいる。出会いはエプソンのCMだった。
ある日テレビをボーッと見ていたら、レーサー・中島悟さんの激シブな姿が映った映像が流れてきた。そして、そこに被さり流れる「行くぞ地の果て 見た事もない夢よ」という歌声。びっくりした。なんという疾走感だろう。心の昂りを煽ってくるこの感覚はなに! 誰が歌ってるの? 思わず身を乗り出した。
クレジットを確認すると「矢萩渉」。ヨッシャとCDレンタルに走り、無事その曲「冒険者」を手に入れたのだった。
調べてみると、1990年のCM。なんと31年も前の出来事であるが、よく覚えている。それほど強烈なインパクトだったのである。その声の主、矢萩渉が安全地帯のギタリストだと知ったときは本当に驚いた。