「ひとりぼっちのエール」ライブバージョンの衝撃
かつては警戒すらしていた安全地帯を、どんどん好きになっていった私。今では「ワインレッドの心」も大好きだ。私が精神的・年齢的に追いついたというのもあるだろうが、安全地帯の歌が「発酵する」せいもある。どんどん聴き味が変わってくるのだ。
「Friend」は、発売当時は片思いの歌に聴こえていたが、年を取った今では、遠く離れた友人が「私も忘れないからあなたも忘れないで」と言ってくれている気持ちになる。
私が安全地帯で最も好きなのが「ひとりぼっちのエール」。1993年のドラマ「お茶の間」のエンディングで流れていて「なに? この泣けるラララは!」と驚いてクレジットをチェックし、CDを手に入れた。音がすべてやさしく行進している感じで何度も聴いたものである。
ところがその後ライブバージョンを聴いたら、やさしさの行進どころではなく、情感の機関車! 歌とサウンドが静かに燃えてエネルギーとなって放出するイメージ。両手を広げて呼応する観客との一体感に、震えるほど感動した。
振り返ってみれば安全地帯の曲は、出会いも再会も驚きだらけである。テイクによって違う感動が毎回訪れるので、油断ができない。
3度の活動休止を経て、デビュー40周年へ
安全地帯は来年の2月で40周年を迎える。その間3度も活動を休止しており、2回目の活動休止期間は約10年、3回目の活動休止期間は約6年。普通ならフェイドアウトしそうだが、それでも彼らは再集結をし、今に至る。
しかも、それぞれ活動休止明けには、ブランクどころか「出逢い」や「蒼いバラ」など名曲が誕生しているからたまらない!
紆余曲折を経て、長い時間を共にしているバンドから出る「音を通して分かり合う感」は不思議でたまらないし、本当に羨ましい。
バンド最年少の玉置浩二は9月13日で63歳。最年長は六土開正で65歳。近年のライブ映像や動画を見ても、顔を合わせ「へへっ」と笑顔をクシャクシャするメンバーは少年のようだ。現在ドラムの田中裕二が病気療養中だが、ゆっくり治していただきたい。そして、40周年には全員揃った「へへっ」が観たい。
水分と温度、触感まである気がする安全地帯の声と音。プルシアンブルー、碧、オレンジ、蒼など、複雑な色で彩られる歌詞。そこから届くエールはいつも直球、「愛」である。
複雑だけどシンプル。自由だけど最高の調和(ハーモニー)。ハラハラするのに癒される。
ああ、安全地帯はやっぱり今もデンジャラスだ!