きょう9月16日は、俳優の内野聖陽の誕生日である。1968年生まれの彼は53歳になった。現在、NHKの連続テレビ小説『おかえりモネ』でヒロインの父親を演じるほか、11月には一昨年に出演したドラマ『きのう何食べた?』の劇場版の公開を控える。同作で同性愛カップルを演じる西島秀俊とは、『おかえりモネ』でも共演シーンがあったのが記憶に新しい。いずれの作品も脚本は安達奈緒子である。
筆者はここしばらく仕事のため過去のドラマをチェックするなかで、期せずして内野の出演作品に当たることが続いた。幕末を舞台にした『JIN―仁―』(2009年・2011年)では、放送当時に評判をとった彼の扮する坂本龍馬の人たらしぶりに、御多分に漏れず魅了された。また、昨年WOWOWで放送された『鉄の骨』では中堅建設会社の常務を演じ、業界内での談合をめぐり、清濁併せ呑みながらしたたかに振る舞うさまが印象に残った。かと思えば、『不機嫌なジーン』(2005年)では、科学者として国際的に評価されながら、ひどい浮気者でナルシストという男を演じており、その役柄の幅広さに改めて驚かされた。
役に対して2つの方向からアプローチ
『不機嫌なジーン』と同じく大森美香のオリジナル脚本による『10年先も君に恋して』(2010年)も、内野が出演した隠れた名作である。このドラマで彼は、上戸彩演じるヒロインと出会って恋に落ちる男と、のちに彼女と結婚するも、10年後の未来からその出会いを阻止すべくタイムトリップしてくる同じ男の“2役”を演じた。結婚前の男が、どちらかといえば寡黙で情熱を内に秘めたタイプなのに対し、未来の彼は饒舌ながら人生にすっかり冷め、性格はかなり変わってしまっている。それでもあくまで同じ人物という難しい役どころを、内野は見事にこなしていた。
内野の徹底した役づくりはつとに知られる。本人もたびたびそれについて語っている。あるインタビューでは、役に対して2つの方向からアプローチをすると、次のように説明した。
《この作品のこのキャラだったら“こうあらねばならない”部分と、“こうありたい”部分の両方から探ります。前者は左脳で考える理詰めの部分。後者はどういった味つけ、肉づけをしたら奇想天外で楽しいかを感じる部分。だから、ニュートラルな自分はこうだと限定しないようなところがずっとありますね》(※1)
また別のところでは、役にアプローチするため、一人孤独に自分と台本に向き合う仕込みの時間と、インプットした状態で現場で揉まれながら新たに役をつくっていく時間が必要だと明かしていた(※2)。