1ページ目から読む
3/4ページ目
“本州最後の秘境”が中間地点
尾鷲から2時間、奈良県下北山村の池原ダムを過ぎて集落に入ると、久しぶりに民家を見る。ただ集落があり、そこに人が暮らしているだけで、とても安心する。
下北山村には、この行程で唯一となるコンビニが存在する。コンビニといっても夜には閉店してしまうヤマザキYショップで、2階は民宿になっている。釣り宿が営む商店といった雰囲気だ。
さらに1時間以上走ると、十津川村で再び集落を目にする。十津川村は鉄道や高速道路から遠く離れ、どの方位からも到達が困難であることから“本州最後の秘境”と呼ばれている。沿道には貴重なガソリンスタンドもあるが、日曜日は営業していなかったり、夕方早い時間に閉まってしまうので、気が抜けない。この環境では、ジュースの自販機があるだけでもありがたいと思うしかない。
十津川村がおよそ中間地点になるのだが、ここまで到達するのに半日かかってしまう。朝からひたすら酷道を走り続けると、正直、この時点でもう飽きてくるのだが、ここから抜け出すには、さらに酷道を走るしかない。じわじわと精神的にも追い込まれてくる。
「転落死亡事故」と書かれた無数の看板
だが、追い打ちをかけるように、この先、道はさらに酷くなる。ガードレールは姿を消し、川底まで遮るものは何もない。その代わりに設置されているのが“転落死亡事故”などと書かれた無数の看板だ。物理的に遮るのではなく、心に訴えかける作戦のようだ。
しかし、その看板も功を奏さなかったのか、残念ながら実際に転落死亡事故は発生している。緊張感を取り戻して、慎重にハンドルを握ることが重要だ。