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 そこに明るい光を差し込んでくれたのが、ソフトボールの米国代表監督だった。

 福島のホテルで桃を6個も平らげ「デリシャス」と感想を述べたエリクソン監督の発言は、多くの人、特に福島の人たちを笑顔にした。福島の人たちにとって桃を褒められるのは、我が子を褒められるようにうれしいのだと聞いた。

 というわけで、監督のコメントに便乗してオリンピックで「福島の桃デリシャス」プロジェクトを勝手に始めたわけだが、パラリンピックでは壁にぶつかった。

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 パラリンピックでも続けてほしい、桃配っちゃいなよ、というコメントをいただいたものの、筆者はパラリンピックの取材記者証は持っていなかった。

 私はオリンピックで流れを作ったのだから、パラリンピックでは別の誰かが組織的に大々的に続ければいいじゃないか。そんな考えも頭をよぎった。

 そんな時、パラリンピック日本選手団団長の河合純一さんのコメントが目に入った。

「パラリンピックでもこういう動きがあるといいですね」

 心が決まった。

直接渡せないなら、送ればいいじゃないか

 プロジェクトの発起人である福島のボスに相談すると、同僚や陸上コーチからのカンパで、桃4箱を用意いただけることになった。

野球ボールと比べると桃の大きさがよくわかる

 直接渡せないなら、送ればいいじゃないの。

 送付先の候補は2名。

 カナダTV局CBCのレポーター、デヴィン・ハーロウさんと、パラリンピック長野大会3冠のマセソン美季さん(旧姓は松江)。

 デヴィンさんはセブンイレブン大好きレポーターとして、「セブンイレブン。あなたがいないと何もできないよ」などの投稿がSNSで人気になっていた。7月中旬に来日し、超人的なスケジュールでオリンピック、パラリンピックを精力的に取材。朝は4~5時に起床、就寝は日にちが変わってからという過酷な日々を送っていた。デヴィンさんとはオリンピック期間中に連絡をとりあったのだが、CBCのオンエアのタイミングと重なってしまい、残念ながら桃を差し上げることはできなかった。

 デヴィンさんに「桃はお好きですか? もしよろしければ福島の桃を送りたいのですが」と連絡すると「本当ですか。いただきたいです」と返信が来た。

 何回かやり取りした後に、送付に至る経緯を説明した。韓国のニュースのこと、米国ソフトボール監督が6つ食べて「デリシャス」と言ったこと。オリンピックで始めた「福島の桃デリシャス」プロジェクトのこと。

 でもSNSに掲載してほしい、とはお願いしなかった。人それぞれSNSの使い方にはポリシーがあるし、ましてやデヴィンさんは報道に関わる人間だ。桃を送るからSNSで紹介してほしいと強制はできない。

 福島の桃を食べて、厳しい日程を乗り切ってくれれば、そう思っていた。

 数日後、「桃、届きました。とてもうれしい。ありがとう! 桃の種類を教えてもらえる?」とデヴィンさんから連絡が来た。

 そしてSNSで動画と共に紹介してくれた。

「たった今、ホテルに戻りましたが、福島の桃『ゆうぞら』が届いていました。#福島の桃デリシャス」

 ネットニュースなどで紹介されたこともあり、この動画は46万回以上再生された。

 日本、そしてカナダのフォロワーからは「福島の桃、おいしいよ」「桃の食レポもよろしくね」など楽しそうなコメントがたくさんつき、ネガティブなものはほとんど見当たらなかった。