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「内部通報の犯人を捜す」「辞めさせるまで追い込むぞ、俺は」 日本郵政“パワハラ潰し”卑劣な手口

2021/09/29
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恐怖の内部通報者捜し

「どんなことがあっても仲間を疑わん。これが特定局長の鉄則。してないな、そんなこと? もしあったときは、おれんぞ」

 福岡県小竹町の新多郵便局で2019年1月24日、局長の西村光晶(64)の迫力ある声が、ICレコーダーで記録されていた。

日本郵便の本社が入るビル ©共同通信社

 西村は日本郵便で九州支社副主幹統括局長、局長会では九州地方郵便局長会副会長という要職を務め、旧特定局長としては九州ナンバー2の座にあった。同時に、日本郵便で筑前東部地区連絡会の地区統括局長、局長会では地区郵便局長会の会長も兼ねていた。その配下の郵便局長がうめき声をあげる前で、西村は「会社はダメちゅうけど、犯人を捜す」と迫ったのだ。

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 捜していた“犯人”とは、別の郵便局長を務める息子の不祥事を3カ月前、日本郵便本社へ知らせた内部通報者だ。息子は“証拠不十分”で不問とされ、西村はコンプライアンス担当役員から得た情報をもとに、通報者は「地区内の局長5人」と踏み、疑わしい局長を呼び出して「クビ賭けきぃか?」と締め上げた。

「社員ならいいけど、局長の名前がのっちょったら、そいつらは俺が辞めた後も絶対潰す。絶対どんなことがあっても潰す。辞めさせるまで追い込むぞ、俺は」

「名前がのっちょったヤツをオマエは知らんか? 後で絶対オマエの名前は出てこないな? 約束ばい。いま俺の言ったこと、そげんなるよ」

 そんな恫喝が1時間以上続き、最後は情報を上げるよう念押しして終わった。罪に問われた行為はこの1件だが、前後にも複数の局長が詰問されていた。通報者がいると疑われた地区で局長らが緊急招集され、部会長から“身の潔白”を一人ずつ示すよう迫られる一幕もあった。