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街角ではデモ隊の代理闘争勃発!! 韓国がトランプ大統領を迎えて

にわかに「朴槿恵大統領釈放」運動に様変わり

2017/11/10
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 韓国警察は最高レベルの非常警戒令を発動し、一部区域をのぞいた集会・デモを禁止したため、反対派と警察の小競り合いがあちらこちらで見られた。その夜には、トランプ大統領の車列の経路に蛍光棒などを投げ込み、ルートを変更させる異例の事態も起こり、これには同じ進歩派からも「やり過ぎ」という声が上がっていた。

トランプ大統領の旗には、「朴槿恵大統領を青瓦台に復帰させろ」、朴槿恵前大統領の旗には「国民よ、目覚めよ」と書かれてある ©菅野朋子

国会演説でプロゴルファーにも言及

 トランプ大統領の訪韓でもっとも注目されたのは、1993年のクリントン元大統領以来、24年ぶりとなる国会演説だった。

 予定より13分長い35分間の演説の中には、今までのような過激な文言はなく、北朝鮮の残虐で非情な実態に触れ、「われわれを過小評価し、試してはならない」と警告。そして、「ミサイル開発を放棄し、完全に核を放棄すれば北朝鮮にとってよい将来を提供できる」と対話に含みを持たせた。

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 また、韓国のこれまでの発展を讃え、ゴルフ好きらしく、「US女子オープンの1位から4位まですべて韓国出身」と触れ、「今年のUSオープンはニュージャージーにあるトランプゴルフクラブで開かれた。そこで勝利したのは韓国のすばらしいプロゴルファー、パク・ソンヒョンさんだ」と笑いを誘いながらも賛辞を惜しまなかった。

 中道派の全国紙の記者はこう見る。

「韓国について配慮したメッセージは、親近感を演出したのでしょう。

 北朝鮮の核問題については、今までのような過激な発言もなく、北朝鮮へのメッセージも明確で無難で、肩すかしというか、驚きました。ただ、航空母艦3隻が10日から朝鮮半島周辺で訓練を行うとされ、北朝鮮との対話についても、過去に語った『対話は時間の浪費』という言葉を打ち消すような強いものではなかった。まだ、予断は許しません」

 革新・進歩派の野党・正義党は、「まるで反共教育を受けている気分だった」という論評を出し、保守派の野党・自由韓国党の洪準杓代表は、「今までのメッセージの繰り返しに過ぎず、国民を安心させるだけの新しく強いメッセージはなかった。これは(文政権との)衝突を避けたのではないか」と文政権を批判した。

韓国大統領府を訪れるトランプ大統領 米国防総省HPより

 トランプ大統領の訪韓前、韓国では政府が表明していた「米中バランス外交」に懸念を表わす声がでていた。

 韓国政府は10月末に、「北朝鮮問題に関して中国は重要な国である」として関係改善を図り、中国へ「米国のミサイル防衛(MD)体系に参与しない」「THAAD(高高度迎撃ミサイル)の追加配備を検討しない」「日米韓の安保協力を軍事同盟に発展させない」という「3不原則」の立場を明らかにしていたためだ。

「ひとまず杞憂に終わりました」と言うのは前出の記者だ。

「結局、韓国は米国の武器数十億ドルを発注する予定としたことで、3つの地雷(3不原則、米韓FTA、コリアパッシング)を踏まずに済んだという見方が大勢です。首脳会談後の第一声がこの件についてで、トランプ大統領は今回アジアに武器を売りさばきに来たのかと皮肉る声もあがりました」

 トランプ大統領の舞台は習近平国家主席の待つ中国に移り、その後ベトナムのダナンで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)ではロシアのプーチン大統領と首脳会談を持つと伝えられている。

 先だって日韓との首脳会談では、トランプ大統領は「北朝鮮がこのライン(レッドライン)を超えれば叩く」と囁いたといわれる。

 アジア歴訪を終えた後、トランプ大統領は北朝鮮の核問題をめぐり、どんな一手を打つつもりなのか。先制攻撃に踏み切るかどうかは、この2、3カ月がヤマといわれる。

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