文春オンライン

“逆らう奴はクビを切るぞ” 「コネクティングカップル」の張本人を復活起用…菅義偉“強権人事”の思惑は何だったのか

『墜落 「官邸一強支配」はなぜ崩れたのか』より #1

2021/09/28

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会, 政治, 読書

note

コネクティングカップルの復活

 和泉は安倍政権時代から内閣官房の健康・医療戦略室長として、感染症研究を謳う加計学園の獣医学部新設を後押ししてきた。元号が令和に改まり、コロナ禍で安倍vs.菅のすきま風が吹くようになると、和泉のおかれた政権内の環境も変化した。

 小泉進次郎の結婚報告で決定的になった安倍側近グループと菅の対立のなか、和泉は厚労省の医系技官、大坪寛子との密会スキャンダルに塗れた。彼女は和泉に見出され、内閣官房審議官・戦略室次長という異例の出世を遂げ、和泉はコロナの感染症対策を任せた。

 2020年が明けて間もなく、中国発の新型コロナウイルスが日本に上陸した。最初に大きなクラスターが起きたのが、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」だ。和泉は大坪にコロナウイルスを船内に封じ込めるよう対策を委ねた。だが、未知のウイルスに右往左往するばかりで、船内の乗客にコロナが広がり、失態が相次いだ。すると前年に報じられた和泉との男女問題が蒸し返され、彼女に対する世間の怒りが増幅されていった。

ADVERTISEMENT

「君はもういい、下がれ」

 首相の執務室で安倍にクルーズ船の感染状況を報告しようとした大坪に対し、政務秘書官の今井が突き放す場面まであった。挙句、和泉と大坪の二人は、“上役”である菅とともに、コロナ対策から外されていった。和泉は夏の人事で補佐官から退くのではないかと囁かれ、大坪は健康・医療戦略室の次長と内閣官房審議官の任を解かれ、厚労省に戻った。