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 すると小島は、急に証言台の前に起立すると、厳粛な雰囲気をぶち破るように大声を発した。

「はい! 控訴は致しません。万歳三唱させてください」

「止めなさい」

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「ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」

 裁判長の制止を無視して、いきなり腕を3回振り上げ、大声で万歳三唱したのだ。

 場違いな行動に周囲はただただ呆気にとられていた。被害者側の弁護人は皆、絶望的な表情を浮かべている。小島の主任弁護人は、嫌悪感を隠そうともせず小島から離れた。傍聴席にいた被害者の関係者らしき男女は、警察官にエスコートされ、目に涙を浮かべながら逃げるようにして外へ出ていった。

写真はイメージです ©iStock.com

 傍聴人たちは、その場で足を止め、なかなか退廷しない。さらに何か起きるのではないかと思ったのだろう。最後の最後で、小島のパフォーマンスを見せられた気分だった。

「残念にも殺しそこないました」

 このような挑発的な行動は、今に始まったことではない。小島は初公判から、人の怒りを買うような発言ばかりを繰り返していた。

 被害者女性2人に対して、「残念にも殺しそこないました」、殺害した男性に対しては「見事に殺し切りました」と言い放ち、「有期刑になれば、出所してまた人を殺します」と高らかに宣言もした。さらに、厳罰を求める被害者の調書が読み上げられたときには、笑顔で拍手さえしている。あまりに理解しがたく、被害者感情を考えれば許されないことだ。

 しかし彼は、こうして心証を悪くすることで、無期懲役刑の判決が出ることを望んでいた。有期刑でもなく、死刑でもなく、無期懲役――。

 小島は、一生刑務所で暮らすために無差別殺人を起こしたのである。

 判決が終わり外へ出ると、「殺人鬼は処刑せよ」というプラカードを持った男性が、裁判所入口にある駐車場の立て看板を蹴り飛ばして怒鳴っていた。判決に対する抗議である。