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ヌルッという感触で出血を確認…「犯人の目にはまるで感情がなかった」“新幹線無差別殺傷事件”現場に居た女性が明かす“犯人”の姿

『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』より #2

 2018年6月9日、走行中の東海道新幹線の車内で男女3人が襲われ、2名が重軽傷、1名の男性が死亡するという凄惨な事件が起きた。犯人の名前は小島一朗。犯行の動機について聞かれた彼は「刑務所に入りたい」と答えた……。

 身勝手すぎる理由で無差別殺傷を実行した男は、なぜそうした歪んだ考えを抱いたのか。そして、どのような経緯で犯行に至ったのか。

家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、裁判記録を元に事件のあらましを振り返る。(全2回の2回目/前編を読む)

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血で染められた新幹線

 以下は、主に裁判記録を元にした再現である。

 小島が、辰野にあるホームセンターでナタを購入したのは、2018年6月8日、犯行前日のことだった。凶器にナタを選んだ理由は、撲殺との両面を考えてのことだ。鞘付きのナタだから、バッグにも入れやすい。同じ日、予備の凶器として鞘付きの果物ナイフも購入した。

 一番に狙う場所は首。太い血管が切れるくらいまで振り下ろす。確実にやり遂げるために、彼は前夜に公園でナタの素振りもしている。

 犯行当日2018年6月9日の朝、小島はJR岡谷駅付近の自転車置き場に自転車を停めると、特急あずさに乗って諏訪を離れた。最後の食事を味わうために、新宿へ向かったのだ。

 その日は、土曜日だった。昼頃に到着した小島は、事前に携帯で調べていた美味しいラーメン屋を訪ね歩いた。そして最後の食事にと、ラーメンを食べた。そのまま新宿で時間をつぶし、夜が来るのを待って東京駅へ移動する。

 東京駅に着くと、JR東海道新幹線の券売機で、「のぞみ」の最終便を選んで指定席券を購入した。誰でもいいから隣に座った人間を襲う。その後は、目についた相手をもう1人。あとは流れに任せようと考えた。座席は、被害者の退路を塞ぐため、2人席の通路側を選択している。

 改札を抜けると、駅構内にある男子トイレの個室に入り、犯行準備に取り掛かった。鞘の留め金を外し、ナタを取り出しやすくしてバッグに戻す。ナイフはズボンの右ポケットに入れた。

 小島を乗せた新幹線は、21時24分、東京駅から発車した。