それは、多くの国民に共通する感情だった。「なぜ、被告人の希望通り無期懲役にするのか」「刑罰ではなくご褒美ではないか」「仮釈放させて再犯したらどうするのか」、テレビやネットでは激しく議論が交わされていた。そのほとんどが「小島を死刑にしろ」という意見である。
「無期懲役囚になりたい」男のために、どうして被害者が殺されなくてはならなかったのだろう。一生残る傷と後遺症を抱えながら、残りの人生を歩まなくてはいけなかったのだろう。
そして小島は、万歳三唱できて本当に満足だったのか――。
刑務所に入るための無差別殺傷
事件が起きたのは、2018年6月9日午後9時45分頃。小島一朗(当時22歳)は、東海道新幹線・東京発新大阪行き「のぞみ265号」の12号車内において、新横浜─小田原間を走行中に、突然ナタとナイフを持って乗客を切りつけた。
最初に襲われたのは、小島の隣に座っていた女性X子さんで、頭部などにナタを複数回振り下ろされ重症。次いで、通路を挟んで向かいに座っていた女性Y美さんが、逃げようとする際に肩を切りつけられた。さらに、危険を察知して止めに入った男性Z夫さんが、揉み合った末にナタとナイフで攻撃を受け、無惨にも殺害された。
のぞみ車内では非常ボタンが押され、緊急停止したのち、小田原駅まで走行。待機していた捜査員が突入すると、小島は抵抗することなく現行犯逮捕された。
1人を殺害、2人に重軽傷を負わせた小島は、取り調べに対し、「むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった」と供述。この時点から、「刑務所に入りたかった」「無期懲役を狙った」などと供述していた。
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