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「不倫に見せかけたホラー」と阿鼻叫喚…大ヒット『ただリコ』、キスマイ北山宏光・モラハラへ“キャラ変”の理由

2021/09/29
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夫婦に監禁された被害者役は、17キロ減量

 どちらの正隆も人でなしであることに変わりはないが、暴力的ではない分、原作の方がまだ理解できる。弱腰ながら殺人共同生活にも自主的で、正隆目線で物語が進行するため、彼がどのような考えでこの行動に至るのか、心情も捉えやすい。

 しかし、ドラマ版があえて共感できそうな部分を削ったのは、「なぜこのような事件を起こしてしまったのか?」「どうして引き返そうとしなかったのか?」といった夫婦がやらかしてきた過程を理解してほしかったのではなく、それぞれの孤独を抱えていた正隆と雪映が殺人共同生活を過ごした“その先”に、伝えたいテーマがあるからではないだろうか。

 柿野夫婦を演じる北山と中村が土台ならば、作品をリードしたのは被害者の二人だ。萌役の萩原みのり、そして萌の退場後に大活躍したのが、萌の彼氏・佐野を演じた深水元基である。萌が働いていたガールズバーを経営していた佐野は、萌の消息不明を口実に正隆を強請る。佐野は犯行に気付いた第一号なのだが、夫婦に捕まってしまい、肌着一枚に大人用おむつ姿での監禁生活を余儀なくされてしまう。

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萩原みのり ©AFLO

 深水といえば、映画『新宿スワン』シリーズ(2015年・2017年)をはじめ、187cmの長身を活かした抜群の存在感を放つ役柄が多く、北山のテレ東初主演作『ミリオンジョー』(2019年)にも出演している。

 ガタイが良いコワモテのチンピラ風だった序盤の佐野は、次第に見る影もなくなっていった。インタビューによると、クランクイン前と撮影中に計17kgも減量したそうだ。一時期は納豆とキャベツだけという劇中の佐野に劣らぬ慎ましい食生活で、あばら骨が浮き彫りになった不健康そうな身体を作り上げたのである。

『ただリコ』もまた、あらゆる角度から見て実写化不可能とされていた作品の一つだと思うが、このぶっ飛んだストーリーを実現させ、さらに説得力を齎した深水の役者魂には感服せざるを得ない。

 そんな佐野は退場し、柿野夫婦の逃避行もいよいよ終盤だ。ジリジリした暑さを感じる7月に始まり、少し肌寒くなった9月終わりにピリオドを打つのも、どことなく『ただリコ』らしい。

 これからも新しい不倫ドラマは次々に誕生するだろうが、柿野夫婦による究極の「スクラップ&ビルド(破壊と再生)」を目にしてしまうと、『ただリコ』を超える過激な不倫ドラマはさすがに……さすがに出てこないんじゃないかと、思わずにはいられないのである。

「不倫に見せかけたホラー」と阿鼻叫喚…大ヒット『ただリコ』、キスマイ北山宏光・モラハラへ“キャラ変”の理由

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