「英雄」のようにはやし立てられた青年
逮捕された事実や黒い噂があったにもかかわらず、アカリさんはなぜ青年と会うことを決めたのか。トー横界隈ではある変化が起きていたのだ。
青年は逮捕されてから程なくして、動画投稿を再開。TikTokなどのSNSでは、自分の本名をハッシュタグにして投稿し、コメント欄では「〇〇君カッコイイ」「本当に好き」「貢ぎたい」などのコメントであふれていた。
逮捕によって知名度が上がり、一定数のファンが生まれるほどになったのだ。そして、そのファンのほとんどが18歳未満の少女たちであった。アカリさんもその1人だった。
トー横界隈では「〇〇お帰り」「児ポ〇〇」(児童ポルノ)という言葉とともに、青年と一緒に動画を撮ったり、自撮りをして、ある種の「英雄」のようにはやし立てている風潮があった。青年は釈放後は、バーなどで働き一部のファンが通っていたが、現在SNSの更新は止まっている。
アカリさんはそれ以来、トー横には足を運んでいないという。
「遊びに行ったときに皆で撮ったTikTokがバズっちゃって、学校の子にも知られちゃって。『アイツトー横界隈らしいよ』と陰口をたたかれました。学校中に私の噂が広まったことで、余計に学校に行けなくなりました。今後は多分行かないかな…」
家庭や学校で生きづらい少年少女の拠りどころに
トー横は、家庭や学校で生きづらい少年少女のサードプレイスとしての側面が存在している。しかし、そこには未成年と知りながら性的行為に及ぶ青年のような事例や、無知を利用して悪質な手口で売春をさせたり、不利益な行動をとらせる大人も存在する。
しかし、そんなトー横に先日メスが入った。警察による一斉摘発が行われたのである。この摘発により、未成年の少年少女10人近くが、飲酒や喫煙などの非行をとがめられて、補導されることとなった。これまでは軽く注意する程度だったが、ここへきて本格的に「トー横キッズ狩り」を始めたのだ。
トー横の一部には、猫よけのようなトゲ付きシートが設置され、座れないようになっている。後日、トー横に行ってみると、以前のように未成年が大人数で溜まっている様子は見られなかった。この摘発によって、トー横は良い方向に進むのだろうか。これからの彼らの動きに注目したい。