気候変動が人間の活動が影響している可能性は「極めて高い」
その次の第5次評価報告書は2014年に公表された。ここで示されたポイントは多岐にわたるが、以下にいくつかの論点を列挙したい。
●「気候システムの温暖化には疑う余地はない」。気温・海水温・海水面水位の上昇、雪氷減少などの観測事実が強化され、温暖化していることが再確認された。
●「人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な(dominant)原因であった可能性が極めて高い(95%以上)」。第4次評価報告書では「可能性が非常に高い(90%以上)」であったが、更に踏み込んだ表現となった。
●今世紀末までの世界平均気温の変化は、いくつかのシナリオによれば0.3~4.8℃の範囲で、海面水位の上昇は0.26~0.82メートルの範囲で起きる可能性が高い。
●気候変動を抑制するには、温室効果ガス排出量の抜本的かつ持続的な削減が必要である。
●「CO2の累積総排出量とそれに対する世界平均地上気温の応答は、ほぼ比例関係にある」。最終的に気温が何℃上昇するかは、CO2累積総排出量の幅に関係する。
これらは、800人以上の研究者が4年をかけて執筆したもので、日本からも30人の研究者が参加している。ちなみに、気候モデルやハリケーンの頻度、海面上昇のレベル、自然要因の評価をめぐっては、一部の科学者から異論も出ているが、それは極めて少数派だという。
この報告書の内容は、翌年の「パリ協定」に結実する。正式名称は「第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」という。パリ協定といえば、後年、トランプ前米大統領が「中国、ロシア、インドは何も貢献しないのにアメリカは何十億ドルも払う不公平な協定だ」として脱退したことの印象も強いかもしれないが、実際は、今にいたる世界の気候変動をめぐる議論を決定づけた明らかな転換点であった。