米中「2大排出国」が批准したパリ協定
「気候変動をめぐり、(海面上昇や台風の増大など)不確実な要素を議論する時期は過ぎ去った。主題は『温暖化する地球』となり、ここからは“パリ前”と“パリ後”の2つの時代に明確に区分けされることになった」。『石油の世紀』などの著書で知られるエネルギー問題の権威ダニエル・ヤーギンはこう語っている。
パリ協定は気候変動枠組条約に加盟する全196カ国が参加した史上初の枠組みであり、そのうち191カ国が実際に批准している(2021年3月時点)。何よりも大きかったのは、地球上のCO2総排出量の約4割を占める米国、中国という「2大排出国」が批准したことだ。というのも、それまでは、米国を中心とする先進国と、中国が代表する新興国の利害が一致せず、合意できない状態が続いていたからだ。特に、2009年のCOP15(コペンハーゲン)にいたっては、「中学校の生徒会以来で最悪の国際会議だった」と、ヒラリー・クリントン米国務長官(当時)が漏らすほど壊滅的な状況だった。
では、パリ協定が決定づけたこととは何だったのか。環境省の資料と、原文のニュアンスが微妙に異なるため、原文の訳を載せたい。
パリ協定の目標は、地球温暖化を産業革命前と比較して2℃よりも遥かに低い、できれば1.5℃までに抑えることです。この長期的な温度目標を達成するために、各国は温室効果ガスの排出量をできるだけ早く世界的にピークに到達させ、今世紀半ばまでにカーボンニュートラルの世界を実現することを目指します。
(※環境省の資料では、mid-centuryが「今世紀後半」、carbon neutralが「温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランスを達成」と訳されているなど、原文より弱めの表現になっている)
ここにきて、「今世紀半ばのカーボンニュートラル」が、世界の方向性として明確に示されたのである。