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田中被告は「8年前とまったく変わった。あの頃は…」

 進藤牧師の紹介で、田中被告と同時期に教会で過ごした知人男性にも電話で話を聞くことができた。男性は事件を受けて福岡拘置所へ田中被告に会いに行ったという。その時の様子についてこう述懐している。

「(田中被告と会うのは)8年ぶりでしたが、印象がまったく変わっていた。当時は、気弱な印象は全くなかったのですが、まさに気弱というか……。『子供が毎日夢に出てきて、寝られない』と話していました」

 進藤牧師らが見た8年前の田中被告は、いったいどういう人物だったのだろうか。進藤牧師に詳しく話を聞くため、川口にある教会を訪ねた。スナックから移転した現在の教会は一般的な教会のイメージとは大きくかけ離れている。広々とした空間には、天井から吊るされた大型のスピーカーに、中型バイク、卓球台……。おしゃれな喫茶店のような雰囲気だ。

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 進藤牧師は強面だが、非常に柔らかい語り口調でフランクな様子で、「地域のおじいちゃんおばあちゃんが気軽に入れるような雰囲気にしたかったんですよ」と迎え入れてくれた。

 しかし半袖シャツから出た両腕には入れ墨が入り、左手の小指の第一関節より先がない。彼の波乱万丈な人生を物語るには十分だろう。

「漫画実話ナックルズ」の巻頭カラーを飾った進藤牧師 撮影/ペ・ソ (本人のinstagramより)

 進藤牧師は、田中被告について「ヤクザが抜けきっていなくて、かなり尖っていましたよ」と当時を振り返った。

「涼二は舐められちゃいけん、という感じだった」

「8年前、涼二は先に組を抜けていた、いわゆる“まわり兄弟(※兄弟分の兄弟分)”のつてで私の下に来ました。周囲には同じように更生しようという元ヤクザが多くいましたからね。舐められちゃいけん、という感じでした。ここにいたのは1年もないくらいですが、よく覚えています。1年の間にいろいろなことがありましたから」

約8年前の田中被告(上)と進藤牧師

 進藤牧師によると、8年前、西川口に来た田中被告は、周囲の協力を得て解体工で仕事を始めた。

「最初の3カ月はよくやっていました。教会で寝泊まりしながら、徐々に社会復帰していく人間も多いですが、彼は彼女がいたこともあり、すぐに自分でアパートを借りていました。元ヤクザの人間を特集した福岡のテレビ局の取材にも涼二は顔を隠して出ていましたよ」

 当時のインタビュー映像を見ると、田中被告は「正直、今の法律はむちゃくちゃだ。まじめに立ち直ろうとしている人間を後押ししているようなことを言っているが、実際そういうサポートは一切ない」と話している。