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8年間で変わった「金」と変わらなかった「暴力」

 それからまたもや連絡が途絶えた。そして約半年後、田中被告はまた「先生、金貸してくれ」と急に現れたという。

「さすがに前の金を少しも返さないでそれはないだろう、と今回は貸しませんでした。でも飯も食えていないようだったので中華料理屋に連れていきました。そこで500円玉を渡して、役場に行って生活保護の手続きしてこい、と。涼二と会ったのはそれが最後。それから二度と私の前には現れていません」

 その後、田中被告は福岡に戻り、大翔くんの母親であるA子さんと出会って家庭を持ち、蓮翔ちゃん、姫奈ちゃんが生まれることになる。田中被告が住んでいた県営住宅の複数の近隣住民は事件の前に「数万円貸したが、生活保護が入るとすぐに返してくれた」「5千円貸したがすぐに返された」などと話している。8年前から変わった部分も確かにあったようだ。

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 しかし拘置所でのインタビューで「昔からキレてしまう性格ではあった」と語っていたように、「暴力」から更生することはできなかった。2021年2月、大翔くんに惨たらしい暴行を加えて死に至らしめ、蓮翔ちゃん、姫奈ちゃんを殺害した。

田中被告の養子・大翔くん (「FNNプライムオンライン」5月6日配信より)

「涼二は子供の愛し方を知らなかった」

 進藤牧師はこう語る。

「確かに彼は嘘もつきますし見栄も張る。でも『キリスト教はいい』と断りました。それは当時もある意味、彼は正直な部分も持ち合わせていたということなんです。涼二は子供のことを本当に愛していたんだと思います。

 ただ、彼自身が幼少期に親からの愛情を知らないままに育ち、愛し方を知らなかった。涼二は子供を愛したい気持ちがあっても、どうすればいいかわからなかったのではないでしょうか。

田中容疑者らが使用していた子供用品 ©文藝春秋

 暴行で亡くなった養子の大翔くんは実の母親であるA子さんではなく、涼二を選んだんですよね。子供は涼二と一緒に生きたかったんでしょう。そんな養子を死なせてしまうのは涼二のエゴです。子供たちのために一生償って、すべきことをしてほしい。キリスト教の考え方では罪を犯しても命の価値は変わりません。これから彼がどうなるか分かりませんが、塀の中でしっかりと罪と向き合い、悔い改めてほしいです」

 自らも服役経験のある進藤牧師は刑務所の中で「どう生きるかが重要だ」と話した。近く、田中被告の面会に行くという。

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