2021年2月に、養子の大翔くん(ひろと・当時9)を暴行の末に死に至らしめ、その10日後に心中するために実子である蓮翔ちゃん(れんと・当時3)と姫奈ちゃん(ひな・当時2)を絞殺した田中涼二被告(42)。文春オンライン取材班は、福岡拘置所で面会を重ね、6回にわたり田中被告の肉声を伝えてきた。
田中被告が語った人生は壮絶だった。
かつて指定暴力団に所属していた“元ヤクザ”
約20年前に結婚していたのは、「主婦ホスト漬け暴行致死事件」の“太宰府の女帝”山本美幸被告=懲役22年の有罪判決、控訴中=。当時、山本被告とともに、彼女の元交際相手とその友人に残虐な暴行をし、200万円を脅し取っている。両親は19歳頃に自殺。同じ頃に「ヤクザだった」という山本被告の父親に誘われて同じ組に入り、覚醒剤を自ら使用するなどして複数回逮捕されたこともある。また山本被告を含め、これまでに計4回結婚し、7人の子供をもうけた。
しかし約8年前、田中被告は激しい日々に嫌気がさし、ヤクザの道から逃げ出した。
「対立組織との抗争が激しくて、自分が帰宅すると手榴弾が投げ込まれたんです。シノギもきつくて稼げないし、このままじゃいつか死んでしまうと思いました。それで東京に飛んだんです」
知人のつてを辿り、行きついたのが埼玉県川口市の教会だった。そこで田中被告を迎えたのが牧師の進藤龍也さん(50)。進藤牧師はかつて指定暴力団に所属していた“元ヤクザ”だ。
「罪人の友 主イエス・キリスト教会」を開拓
進藤さんはこれまで複数回にわたって覚醒剤を使用するなどし、前科7犯で3回の服役を経験してきた。しかし刑務所で聖書に出会い、洗礼を受けて川口市の母親が経営するスナックで「『罪人の友』主イエス・キリスト教会」を開拓。現在は元ヤクザや薬物中毒の人間を受け入れ、更生を支援しているのだという。
自身の体験をベースにした講演が人気で複数の著作もあり、全国各地の刑務所では“更生した人間”としてインタビューがラジオ放送されている。進藤牧師は「日本中の受刑者に知られているんですよ」と笑う。
これまで多くの元受刑者を受け入れてきた進藤牧師だが、なかでも田中被告は印象的だったようだ。記者が電話で田中被告について聞くと、すぐに思い出したようだった。しかし「九州3児遺体事件」は知らず、その後に事件の詳細を知って絶句した。その後、こんなメールが送られてきた。
《彼は自分を受け入れられず、死にたいと思い続けているけど死ねない、そんなやつなんです。人を巻き込むことはあってはならないと思いますが、彼に必要なのは人間らしい心を取り戻すこと、そして悔い改めること。妻と泣きながら祈りました》