1ページ目から読む
3/4ページ目

「なんとかして立ち直ろうと頑張っているように見えました。仕事にもしっかり出ていました。ただ、更生はそう簡単にはできない。『暴力』と『金』の問題は、私の下にいる間、ずっとついてまわりました」

交際相手への激しいDV「羽交い絞めにして…」

 教会にいた別の関係者に話を聞いたところ、「涼二はよく喧嘩をしていました。同じように教会に来ているヤクザを辞めたての人間と揉めてしまうんです」と語った。しかし暴力の矛先になっていたのは、ともに更生を目指す人たちだけではない。交際相手へのDVも激しかったようだ。進藤牧師が語る。

「当時付き合っていた彼女にも、すぐ暴力をふるおうとするんですよね。少しでも気に入らないことがあると、私の目の前でも『なんだこの野郎!』みたいに殴りかかる素振りをすることがありました。素振りだけではすまなくて、私達が彼を羽交い締めにして押さえたこともありました」

ADVERTISEMENT

進藤牧師 ©文藝春秋

 

 しかし、進藤さんはそんな田中被告に対し、粘り強く交流を深め、更生への道を示し続けた。

「私は野球をやっていて、涼二も幼い頃からやっていた。それで一緒にバッティングセンターに行こうとなったのですが、あいつはよく打っていた。私は全然だめだったから、よく打てるなと感心しましたよ。銭湯に連れて行って今後について、話し合ったこともありました」

ギャンブルに無駄遣い…「先生、金を貸してくれ」

 しかし田中被告が川口での生活を始めて3カ月が経った頃から、徐々に教会から足が遠のいていったのだという。

「彼女が同棲していたアパートから出ていってしまったんです。DVで命の危険を感じたのでしょう。その頃くらいから仕事にも出なくなり、涼二とも音信不通になってしまいました。教会へ来ても、更生できるやつとできないやつがいる。再び犯罪に手を染めてしまう人間も少なくない。涼二がまた悪いことをしていないか、心配していました」

田中容疑者 ©共同通信

 その約2カ月後、進藤牧師の心配をよそに田中被告は何事もなかったかのように急に教会へ戻ってきた。

「涼二は私のことを『先生』と呼ぶんですが、あるときに急に現れて『先生、彼女の実家のある大阪に行きたいんで金を貸してくれ』と。7万円を貸しましたが、返ってくるとは思いませんでした。涼二は競輪や競馬が好きで、面倒を見てくれていた社長からまとまった額の金を借りたままでしたしね」