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25年ぶりVへ…ミスター・ブルーウェーブ藤井康雄が明かす、優勝に必要なたった一つの思考法

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/10/05
note

優勝するために必要な心構えとは……

 残り20試合弱。優勝に向けて本当の勝負どころが始まります。僕は生涯打率は2割5分ですが、ここぞという場面では仕事ができたという自負があります。代打満塁本塁打4本は日本記録ですし、サヨナラ打の数でもパ・リーグの10傑に入っているぐらいなのです。

 ではどうすれば勝負所で活躍できるか。どんな商売でも同じで、プロである以上、自己満足ではダメでお客さんにどう喜んでもらえるか、ということが大事なのだと思います。自分が打ってヒーローになるんだ、もしくは打てなかったらどうしようというように自分にフォーカスするのではなく、「ここで打てばお客さんに喜んでもらえるぞ」と考える。料理人で言えば、自分でいいものを作って満足するのではなく、お客さんにおいしいと言ってもらわないと意味がないですよね。お客さんのために料理の腕を磨いたり、バットを振って練習したりするのは当たり前のこと。その上で、どうやって喜んでもらうか。そういう思いで打席に立っていたから、いい緊張感で臨むことができ、結果が出せたのだと思います。

 ファンを喜ばそうという気持ちは、まさにプロ意識と言っていいでしょう。まあ僕の場合、集中力が4打席持たないというか、そうでもない場面では気が抜けているときもありましたが……。イチローもそうだし正尚なんかは全打席集中している上に、勝負どころでも打つ。本当にすごいバッターですよ。

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 最後に先日引退を発表した西浦についても触れさせてください。彼は足も速いし、ボールへのコンタクト力も高くてとても期待していた選手でした。僕が2軍のコーチの時も1軍に推薦できる選手として上に掛け合ったこともよくありましたね。元気なら中嶋も絶対に使っていたはずです。本当に楽しみなプレーヤーだったので、まさかそんな病気(両側特発性大腿骨頭壊死症)になってしまうとは……。性格的にも超真面目というわけではなく、適度にやんちゃでプロ野球の世界に合っていた。それこそ新しいオリックスの伝統を作っていける可能性のある選手だったと思います。残った選手たちには彼のように志半ばでユニホームを脱がざるをえなくなった選手の分まで思い切ってプレーしてほしい。そして、優勝したときのあの喜びを味わってほしいと心から思っています。コロナ禍でビールかけはできないかもしれないけどね。

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