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ピンチの時こそ「どうぞ、打ってください」中日・松葉貴大が31歳で見つけた“持ち味”

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/10/18

 松葉貴大は判で押したように同じ言葉を発する。登板前は「初回から自分の持ち味を出せるように頑張ります」とコメントし、登板後は「持ち味を出してゲームを作れました」と振り返る。持ち味とは何か。左腕は即答した。

「テンポ良く、ストライク先行で、ゴロを打たせて、ゲームを作ることです。一軍でも二軍でもこれを貫いています。抑えようが、打たれようが、この先も変えません」

松葉貴大

スピードやパワーを求めたことが裏目に

 松葉は2012年のドラフト会議でオリックス・バファローズから1位指名を受けて入団。1年目に4勝、2年目に8勝を挙げるなど早くから頭角を現した。好きな言葉は「努力」だった。

「常に進化したいと思っていました。当時は球の勢いで勝負するパワー系。コントロールはアバウトで、ストライクゾーンに強い真っ直ぐを投げ込んで、変化球はアクセントに少し交ぜる程度。他の選手が結果を出すと、どんなトレーニングをしているのかを聞いて、色々と積極的に取り入れていました」

 才能豊かな後輩は刺激となった。

「凄いなと思ったのは山岡(泰輔)と田嶋(大樹)ですね。でも、『自分は決して負けていない。優れているんだ』と言い聞かせていました。よりスピードを求めて、バンバン三振を取るピッチャーを思い描いていました」

 向上心とプライド。プロのアスリートが持つべきものを松葉はしっかり持っていた。

「実は2017年に少しフォームを変えて、ゴロ率が60%を超えたんです。今のスタイルの原型です。でも、成績が3勝12敗でした。投げては負けの繰り返しで、あの年は本当にきつかった。これではダメだと、もう一度スピードやパワーを求めたんです」

 しかし、これが裏目に出た。向上心とプライドが今度は歯車を狂わせ、心身は疲弊し、信頼と自信を失っていった。2018年は2勝。2019年が始まると、「このままではクビだ」と焦りが募った。その時、ある記事を目にした。

「オリックスのキャッチャーに怪我人が続出して、トレードを模索しているという内容でした。どうしても何かを変えたいと思っていたので、中日に移籍が決まった時は自分にとってチャンスだと捉えました」