すべての客が1日に投入する金額は…
パチスロのメダルは1枚20円が相場。06年に漆原氏が始めた闇スロ店はメダルは倍の40円に設定されていた。現在の闇スロでは25円、40円、100円、500円と台によって様々なレートが設定されているという。漆原氏の店では、全客が一日に闇スロに投入する金額の総計は650万~800万ほどで、うち店の売上が10~15%(約65万~120万円)だった。これは後述するイカサマがない場合の売上である。
闇スロ店の客は前述したように様々な人種がいる。サラリーマン、大手広告代理店社員、不動産会社社長、半グレ、詐欺師、そして芸能人やスポーツ選手である。
冒頭の野球選手Aが闇スロ店に足しげく通っていたのは2015年ごろ。漆原氏が当時、都内で経営していた店にも彼は姿を見せていた。Aを連れてきたのは元チームメイトのBだった。Bは、当時は引退していたものの一軍でバリバリ活躍していた元有名選手である。
Bは漆原氏に「Aは横浜の闇カジノに出入りしているギャンブル狂いです。どうせAは負けるんだから漆原さんの店で回収しましょう」と持ち掛けてきたという。
友人のように振舞っている客でも、一枚皮をめくれば“騙し騙され”の関係にあるというのが、闇カジノ界の業の深さだといえよう。
「彼の人生を考えると“ギャンブル狂い”さえなければ…」
「Bは小金を稼ごうとする利に聡いタイプでしたね。Aはうちの店でもドハマりして週5回は来ていました。“沖スロ”と呼ばれる沖縄のハイビスカスとかがモチーフとなっている台を好んでいましたね。1日に40万~50万円負けていきながら、たまに30万円くらい勝って戻してというペースで遊んでいた。多い時には200万円近くも負けて慌ててBにお金を借りたりしていたこともありました。チャラになりそうなところでも引かず、また50万負けるというように、もはや“負けるために遊んでいるのか”という雰囲気でした。『オカマを掘られる』、というのですが、自分が台を離れたあとに誰かそこに座って勝つのを見たくないという心理が働いていたようです。
でも、私もスロット好きだったので、彼が毎日来るうちにいろいろ話すようになって、気も合いかなり仲良くなりました。彼が事業を始めるということで、開設資金200万円を貸したこともあります。でも、それもAはギャンブルで溶かしてしまったそうです。他のカジノで相当やられていたようです。
でも、彼は毎月5万円ずつ返済をしてきて、キッチリ完済した律儀な男でもありました。彼の人生を考えると“ギャンブル狂い”さえなければ、と思わされましたね」
まさにアングラギャンブルに手を染めたことが身を滅ぼす結果となってしまったのだ――。