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「2人の教頭から、洋二郎が倒れたことについてB子たちがどう説明したかを聞きましたが、実際とは全く異なりました。私たちがイジメに遭った時の写真などを見せながらイチから丁寧に説明すると、教頭先生は絶句していました。最後に洋二郎が『自分が突然学校で倒れると周りが驚いてしまうから、イジメがあったことは伝えなくていいので、僕が抱えてしまった病気について他の生徒に説明してほしい』と訴えました」(同前)

教育委員会から送られてきた黒塗りのイジメ調査報告書

 佐藤くんが教頭に直訴した2日後の9月24日、教頭はホームルーム後にクラスの全員の前で「昨年度にあったことが原因で、洋二郎くんはPTSDという病気になってしまいました。B子さんやC子さんと遭遇したり、彼女たちの声を聞くと倒れたり気分が悪くなってしまいます。気をつけて支えてあげてほしい」と説明した。

 さらに、佐藤くんに対するイジメの再調査が決定され、処分が決定するまで加害者の女子生徒たちが自宅待機になることも決まった。佐藤くんの同級生は“再調査”をこう説明する。

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「9月27日の2時間目に農業科の2クラスが大講堂に突然集められて、聞き取り調査が行われました。生徒が1人ずつ呼ばれて、学校の先生2人にそれぞれ5分ほど質問され、それが5時間目まで続きました。聞かれたのは、『昨年6月以降にB子とC子によるイジメ行為を見たか』『(規制された)エリアに入っていなかったか』『廊下に集まっていたか』などでした。その時に知ったのですがイジメの主犯は3人の女子生徒でしたが、その中のD子は夏休み明けから学校に来ていないようで、質問はB子とC子についてだけでした」

「向こうはゲーム感覚かもしれませんが…」

 陰湿なイジメを受け始めてから1年以上が経過し、ようやく事態が進展しだしたかに見える。しかし、文春オンラインの取材に現在の心境を語る佐藤くんの表情は明るいとは言えなかった。

「学校にいる時は一日中気を張っているので、しんどいことが多いです。ルールでB子さんやC子さんが入ってはいけないことになっている学校内のエリアでも、2人が守らない瞬間もありました。倒れる時は前後の記憶が飛んでしまうことも多いので、誰かと一緒じゃないと不安で動けません。向こうにとっては『イジメた相手に会うか会わないか』というゲーム感覚かもしれませんが、こっちは必死なんです」

 そして10月1日、再調査の結果を受けて加害者生徒への再指導が行われた。能代科学技術高校に再指導の経緯や内容について問い合わせると、以下の回答があった。

「調査の結果や処分については被害者生徒の代理人の方にお伝えしておりますので、学校からお伝えすることはできません。今後もイジメ行為が繰り返される場合は、適切に対応していきたいと考えております」

佐藤くんの全体重がかかって折れたカーテンレール。これが折れていなかったら……

 文春オンラインの取材によると、学校が加害者生徒に下したのは「聴き取りによって、佐藤洋二郎さんに対して、直接悪口を言う等の行為は確認できなかったものの、登下校時間について違反があったことで、佐藤洋二郎さんには苦痛を与えてしまいました。今後は制限区域と登下校について指導を徹底いたします」という処分だった。

 学校という狭い人間関係が数年にわたって続く空間では、イジメの問題は尾を引きやすい。佐藤くんの母親は今も続く苦しみをこう吐露した。

「学校の聞き取りに対して女子生徒たちは、停学解除後の悪口を否定していて、カメラを向けて追いかけたことについても『撮影はしていなかった』と話しているようです。息子の自殺未遂から半年以上が経ちましたが、加害者からの謝罪は一切ありません。今でも洋二郎の部屋のカーテンレールは取り外したままで、部屋のドアもずっと開けた状態にしています。自殺未遂をしたあの日以来、洋二郎より先には寝ることはできません。私たちにとってあの出来事は終わっていないんです」