女子生徒たちの威嚇行為とはどのようなものだったのか。佐藤くんは顔をしかめる。
「8月26日の放課後の掃除の時間でした。僕が教室の前の廊下で手をアルコール消毒していたら、イジメグループの中心的なB子さんが離れた所にいて、僕の近くにはB子さんの取り巻きがいました。2人は僕を挟むように大きな声を出して会話をしていました。気が付いた時にはB子さんが学校との取り決めで入ってはいけないエリアに入って僕に近づいてきて、耳元で会話をされたことで具合が悪くなり倒れてしまいました。B子さんの姿と声に体の拒否反応が出てしまったんです。夏休みも挟んで時間も経っていたので、もう大丈夫だと自分では思っていたのでショックでした……」
佐藤くんは気分が悪くなり部室で倒れ、学校から「迎えに来てください」という連絡が佐藤くんの母親に入った。母親が学校に着くと、佐藤くんは車椅子に座らされ、ぐったりして歩けない状態だったという。
家へ帰っても不安定な様子だった佐藤くんはリビングのソファーで寝ることにしたが、冒頭の場面の通り、夜中に錯乱状態に陥ってしまった。母親は加害者生徒へのルールの徹底などを求めて学校に抗議したが、状況は改善されず、約1週間後の9月3日にはC子と仲のいいE子が、スマホのカメラを向けて佐藤くんを執拗に追いかける事件が発生している。
「放課後に部活の買い出しで学校の駐輪場へ行った時にC子さんとその友人がいることに気づき、いなくなるのを待っていたら見つかってしまいました。校舎内に逃げようと思って速歩きでその場を離れたんですが、C子さんの友人がこちらにずっとスマホを向けながら追いかけてきました。結局、校舎に入ったところで恐怖感がピークに達して倒れてしまったんです。追いかけてきたE子さんはC子さんと仲がよく、いつも教室に僕がいるかを確認してC子たちに伝えていました」(佐藤くん)
「いつになったら治るんだろう。コントロールできない」
さらに9月22日には、佐藤くんが救急車で運ばれる事態も発生した。学校内でB子やC子、E子と鉢合わせをしたのだ。母親が打ち明ける。
「昼休みに洋二郎が学校のエントランスを通った時にB子、C子、E子と遭遇しました。B子とE子は近くの職員用トイレに入り、廊下まで聞こえる大きな声で『(洋二郎が)そこにいたけど』『いるいる』と騒ぎだしたそうです。最後にC子が2人がいる職員用トイレに入るときに振り返り、洋二郎と目が合いました。
『いるいる』などの声で負荷を感じていた洋二郎は、C子と目が合ったことで具合が悪くなり、5時間目の体育の授業へ向かう途中で倒れてしまったんです。処置室に運ばれたものの意識がなく、救急車で病院へ運ばれました。私も連絡を受けて搬送先の病院に向かいましたが、ストレッチャーで運ばれてきた洋二郎は完全に意識が朦朧としていて、顔は真っ白でした」(同前)
病院で1時間ほどの救急処置を受けて佐藤くんは自宅に戻ったが、家族に「いつになったら治るんだろう。何ともできない、コントロールできない」と、不安な思いをこぼしたという。
しかし自宅にもどった1時間後、佐藤くんは「学校はいつも加害者の一方的な話を聞いて出来事をおさめてしまう。僕には何も聞き取りをしなかった。だから今回は自分の口から説明したい」と意を決して学校に向かった。