交通死亡事故が殺人事件に 姉を殺害した罪に問われた弟

2020年10月、警察から「交通単独事故」として報道発表された事故。およそ1カ月半後、運転していた男が殺人容疑で逮捕された。事故の真相は、弟が、故意に事故を起こし、同乗していた実の姉を殺害した「殺人事件」だった。そして、その裁判が始まった。

高沢翔悟被告(22)は、千葉県・市原市で、車を走行中に、故意に速度を加速させながら、法面へ乗り上げ、電柱に衝突させるなどして、同乗していた実姉の絵里香さん(当時26)を殺害した罪に問われている。

実の姉を殺害した罪に問われている高沢翔悟被告(22)。事故により自らも大けがをした(20年12月 市原署)

初公判で起訴内容認める 父親は「寛大な処分を・・・」

9月30日、千葉地裁で開かれた初公判に、高沢被告は頭を丸刈りにして出廷。検察官が朗読する起訴状を、姿勢正しく、前を見つめたまま聞いた後、裁判長に「事実に間違いはありませんか」と問われると、はっきりとした大きな声で「間違いありません」と答えた。

ADVERTISEMENT

法廷では、検察官が父親の供述調書を読み上げた。

父親の供述調書:
翔悟は優しい子で、殺人犯と報道されると心苦しい。翔悟なりに考えた結果で、できるだけ寛大な処分にしてほしいと考えている

高沢被告と姉の絵里花さんが乗った車は大破していた(20年12月 市原署)

自分の娘でもある絵里花さんが殺害されたにもかかわらず、高沢被告を強く非難することはなく、寛大な処分まで求めていたとは…

午後に、母親が証言台に立つと、弁護側・検察側双方から高沢被告について質問が飛んだが、同じかそれ以上に亡くなった姉・絵里花さんについての質問が集中した。

「なんで私を産んだ」と訴える姉 その時、弟は・・・

高沢被告は両親と姉の絵里香さんと4人暮らし。高校卒業後に勤務していた工場を辞めると仕事はせず、祖母の介護や家事などをしていた。

姉の絵里香さんは長年、メンタルクリニックに通い、うつ病や発達障害の診断を受けていた。事件が起きた20年は、仕事をしておらず、家に閉じこもる生活を続けていた。

事故が起きた現場(20年12月 千葉・市原市)

家庭内で、「死にたい」「殺してくれ」「なんで私を産んだの」などと、頻繁に訴えてくる絵里香さん。その度に、母親は落ち込み、それを高沢被告が慰めてくれることもあったとのこと。そして母親は、息子が犯した罪について問われると、次のように証言した。