1ページ目から読む
2/3ページ目

 そして「SDGモーメント2021」の開会セッションでは、まず国連総会の招請を受けたムン氏がSDGsについて6分ほど演説。そして次に登壇するBTSを、「大統領特別使節」「恐らく世界で最も愛されているアーティスト」と誇らしげに紹介した。ムン氏はまた翌日の一般討論演説で、2018年、2020年に続いて三たび朝鮮戦争終戦宣言を国際社会に提案。任期最後の国連での演説を、悲願のアピールで締めくくっている。

 9月20日には大統領夫人のキム・ジョンスク氏がBTSをともない、メトロポリタン美術館で韓国の伝統美術などを鑑賞。そして21日には、米ABCニュースの報道番組にムン氏とBTSが出演した。ムン氏は前日のBTSのスピーチについて、「国連事務総長や私が数百回の演説を行うより、ずっと大きな成果を収めました」と称賛。さらに “Permission to Dance” の振付の一部を上機嫌で披露したりもした。

ムン・ジェイン大統領 ©時事通信社

「BTSに旅費を出していない」という報道まで

 一連のイベントに保守系の最大野党・国民の力が噛みついたのは、その翌日のことだ。同党のカン・ミングク院内報道官は同月21日、「コロナ変異株の流行を理由にアメリカが訪問自粛を求めたにもかかわらず、総会への出席を強行した」「そのためバイデン米大統領との首脳会談開催も決裂した」「強行の理由は、ムン大統領とBTSが登場するショーが必要だったため」「今回のショーの目的は、北朝鮮への求愛メッセージだ」といった趣旨のコメントを発表した。

ADVERTISEMENT

 これに対して大統領府のパク・スヒョン国民疎通首席秘書官は同月24日、「BTSは若者世代の代表として、ムン大統領は韓国の地位が高まったことを受けて、それぞれ招待された」などと反論。また与党・民主党のチョン・スミ常勤副報道官も同日、「朝鮮半島の平和に寄与しようというBTSの純粋な意思を中傷・侮辱した国民の力の発言は容認できない」「BTSとファンに謝罪すべき」と怒りをあらわにした。

BTSのメンバー ©️AFLO

 続いて9月30日には保守系大手紙「朝鮮日報」が、「BTSが “やりがい搾取” された」との “独占スクープ” を報道。「国民の力のチョ・ミョンヒ議員が30日に外交部(外務省に相当)から入手した “国連総会出席関連支出内訳” によると、外交部はBTSに全く旅費を支出していない」と、センセーショナルに伝えた。

 国民の力のチェ・ジェヒョン前監査院長もこれに乗じて「どうしてこんな厚顔無恥な真似ができるのか」と気勢を上げたが、大統領府関係者は「飛行機代と滞在費は所属事務所との事前協議に基づいて事後精算の形で処理した」と一蹴。タク・ヒョンミン大統領府儀典秘書官も「悪意のある誤報」「何を根拠にそんな真っ赤な嘘をつくのか」などと強い不快感を示している。