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 こうした応酬のドタバタは、10月に入っても収まっていない。同月1日にも国民の力のチョン・ジンソク議員が「若い芸能人を政治的外交に動員するのは前近代的で時代錯誤」との批判を繰り広げ、チョン・ウィヨン外相が改めて「BTSの国連総会出席は国連事務局からの依頼に基づく」と説明に追われた。

 ムン政権とBTSを巡る “政治利用疑惑” が政界を騒がすのは、今回が初めてではない。

 2020年9月にBTSのシングル “Dynamite” が米ビルボード「HOT 100」で1位を飾った際、ムン氏はフェイスブックで「K-POPの誇りを大きく高めた快挙」と称賛。するとこれに対して政界の一部から、「BTSの政治利用」との批判が浴びせられた。

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2019年のグラミー賞授賞式 ©AFLO

「大統領の芸能人愛はとりわけ格別」

 2018年11月には、「BTSの “平壌公演” を推進していきたい」と発表した民主党のアン・ミンソク議員がひんしゅくを買っている。保守陣営はもちろんBTSファンやネットユーザーら幅広い層からも、「時代錯誤の典型」「なぜBTSが金正恩にショーを見せなくてはいけないのか」などの非難が殺到した。

 一方でまたムン氏は、BTS以外のスターについても “政治利用” と非難されてきた経緯がある。「朝鮮日報」は「ムンと芸能人」と題した今年9月24日のコラムで、「ムン大統領の芸能人愛はとりわけ格別だ」と批評。

 2017年の中国国賓訪問の際、現地で人気のある女優ソン・ヘギョ、男性K-popグループのEXOらをともなった例などを挙げた。EXOは2018年2月の平昌五輪の閉会式でパフォーマンスを披露したほか、2019年6月の米トランプ大統領訪韓に際して晩餐会に招かれてもいる。これらを効果的な外交演出として評価する声もあるが、野党側の「スターの人気に便乗」という批判も相変わらずだ。

BTSが国連総会ではじめてスピーチしたのは2018年 ©AFLO

 だがBTSの “政治利用疑惑” で叩かれるのは、野党側も変わりない。国民の力(当時は自由韓国党)のハ・テギョン議員は2018年7月にフェイスブックを通じ、BTSの兵役免除を可能にすべきとの趣旨で議論を提起した。だがBTSのメンバーたちはかねてから兵役に就く意思を示していたことから、ファンは「政治利用」だとして反発。ハ議員は「BTSファンが兵役免除を要求した事実はない」「全ての批判を受け入れる」などと釈明を余儀なくされた。

 ただし2020年12月には改正兵役法が成立し、本来なら昨年12月までが入隊期限だった最年長メンバーのジンは1年超の延期が認められる形に。その期限が切れる2022年は大統領選と重なっており、改めてBTSの兵役問題がその争点の1つとして取り沙汰されるのではとも囁かれている。グローバルスターを巡る韓国政界の舌戦は、まだ来年も続いていくことになりそうだ。