2021年5月21日に公開された新曲「Butter」のMVは、4日間でYouTubeの再生回数が2億回を突破。2020年にリリースされた「Dynamite」は、ビルボードシングルチャート「ホット100」で1位を3度獲得。また、国連総会で演説を行ったり、『TIME』誌の表紙を飾るなど、BTSの偉業は数えきれない。
このようなBTSの快進撃を支えてきたのはA.R.M.Y(アーミー、 Adorable Representative M. C for Youth、 以下 ARMY) と呼ばれる彼らのファンたちだ。BTSの音楽に込められたメッセージを熱心に拡散する「ARMY」とはどのような共同体なのだろうか。社会学者のイ・ジヘン氏が執筆した『BTSとARMY わたしたちは連帯する』(イースト・プレス)より、一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目。2回目を読む)
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ハッシュタグで世界中に広める
ウェブ上にはさまざまなソーシャル・メディアのプラットフォームがあるが、BTSとARMYの主戦場はTwitterだ。Twitterは、ユーザーが匿名で自分の興味に一致するアカウントをフォローすることでネットワークが生まれる、開放型ソーシャル・メディアだ。一方Facebookは、ほとんどが学歴やキャリアに基づいた人脈管理型のネットワークで結ばれた、いわば閉鎖型ソーシャル・メディアといえる。Twitterでは興味に沿ってタイムラインが形成され、即時性が高く多彩な情報がどんどんシェアされていく。
テーマが次々に移り変わるTwitterには、自分の地域で今一番ホットな話題をしめす「トレンド」の順位がリアルタイムで表示される。Twitterで今どんなテーマが盛り上がっているのか気になる人は、トレンドをチェックすればいい。トレンドには、#を言葉の前につけて検索を可能にする「ハッシュタグ」が表示される。
TwitterがBTSの主戦場であることは、この「世界中のトレンド」をチェックすれば一目瞭然だ。BTSに関連するハッシュタグは、ほぼ数日に一度、世界中のトレンド1位になり、BTSに関心がないユーザーでさえ、Twitterを開けば否応なく目に入ってくるほどだ。2018年の1年間に作られたBTS関連のハッシュタグは1億を超え、そのなかの多くが世界中のトレンドで1位になった。度重なるTwitterのトレンド1位を可能にしたのは、巨額の広告費ではない。大規模なファンダムと彼/彼女たちの情熱の力によるものだ。