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「BTS関連のハッシュタグは1年で1億超え」 BTSのファン「ARMY」のPR能力はなぜ‟別格”なのか

『BTSとARMY わたしたちは連帯する』より#1

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 Twitterのトレンド順位は、BTSのファンにとって、もっともアプローチしやすい無料のPRツールだ。アルバムのリリースや、授賞式やトークショー、メンバーの誕生日など、BTSの宣伝になりそうなすべての事柄にハッシュタグを作り、トレンド1位にするのがARMYの暗黙の了解だ。たとえば、カムバックが近づくと「#BTSiscoming」のようなハッシュタグをトレンド入りさせ、ティーザー動画やアルバム情報などをツイートし、メディアやTwitterユーザーにアピールする。これは、アーティストに関するニュースがテレビや雑誌などのマスメディアよりもSNSでずっと早くシェアされる現代において、非常に有効な宣伝手段といえる。

韓国のトレンド1位になるのは難しい

 興味深いのは、ARMYにとって韓国のトレンド1位になるのは、世界中のトレンド1位になるよりも何倍も難しいという事実だ。趣味の対象を軸に匿名でフォローするTwitterのメカニズムのおかげで、Twitterはいわゆるオタクたちが集う場となっている。政治オタク、アニメオタク、アイドルオタク。なかでもアイドルオタクは、韓国のTwitterで高い割合を占めている。そのため、韓国のトレンド上位は、ほとんどがアイドルのファンダムによるハッシュタグだ。韓国のトレンドでは、つねにいろいろなアイドルのファンダムが熾烈に競いあっている。そのため、ARMYが一斉にハッシュタグをつけると、世界中のトレンドでは比較的簡単に1位を取れるが、韓国のトレンドでは苦戦することもしばしばだ。トレンド入りするためには、ツイートの数だけでなく、短時間で爆発的に同じ言葉やハッシュタグが投稿されなければならないからだ。実際、BTSのみならず、他のK-POPグループのファンダムも、時々世界中のトレンドでトップになる。K-POPファンは熱狂的だ。ファンダムが大きかったり、ファンが一生懸命だったり、あるいはその両方を備えている場合には、トレンドの上位に入るのはそれほど難しいことではない。

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 ところが、ARMYのPR能力は別格だと感じるケースがある。BTSとはまったく関係ないハッシュタグでトレンド入りしたにもかかわらず、そのツイートにBTSについて書かれていることが時々あるのだ。たとえば、毎週月曜日、「月曜病を乗り越えよう」という意味で上位にランクインする「#MondayMotivation」というハッシュタグのツイートには、月曜病を克服する方法としてBTSの歌を薦め、曲のURLが記されているものも多い。これは、BTSを知らない人にたいする宣伝効果を狙った、戦略的なハッシュタグの使い方だ。2019年、アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンを記念する「プレジデントデー」に投稿された「#PresidentsDay」というハッシュタグの入ったツイートには、大統領よりもBTSのRMに関する内容のものが圧倒的で、Twitterのユーザーの間で「BTSがプレジデントデーにハッシュタグを乗っ取った」と話題になった。BTSが国連総会でスピーチした後、「RMは大統領になるべきだ」とファンたちがジョークをいったことから(2018年、BTSのアメリカとヨーロッパツアーの観客席に「US President KIM Namjoon」「Prime Minister KIM Namjoon」と書かれた横断幕が登場したこともある)生まれた、言葉遊びでありパロディーだ。その日、#PresidentsDayというハッシュタグをクリックした多くのTwitterユーザーは、BTSのRMが大統領の器だということを期せずして知ることになった。