韓国の自治体が日本企業誘致に取り組んでいる。

 2019年7月、日本の経済産業省が、半導体・ディスプレイの核心素材であるフォトレジスト、エッチングガス、フッ化ポリイミドの韓国向け輸出管理を強化すると発表した。政府はまた、翌8月7日、韓国をいわゆるホワイト国(輸出管理上での優遇措置対象国)リストから除外する政令も公布した。

 日本と韓国の間では、いわゆる徴用工裁判や慰安婦合意破棄、レーダー照射など確執が続いていたが、そうした状況下でも韓国にとってはまさに青天の霹靂といえる発表だった。

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韓国全域に広がった「日本製品不買運動」

 フォトレジストとエッチングガスは半導体製造に欠かせない素材で、日本企業が世界全体の供給量でそれぞれ、85%と70%を占めている。フッ化ポリイミドは韓国勢が強い有機ELディスプレイに使われている材料で、日本が世界の供給量の90%を占めている。経済産業省は日本以外からの調達が難しい3品目を選んだのだ。

 韓国は、日本政府の輸出管理強化は、徴用工裁判で韓国の最高裁が日本企業に賠償金支払いを命じた前年10月の判決に対する報復だと主張。文在寅大統領が「ふたたび日本に負けない」と発言し、与党・共に民主党が主導権を握る自治体が反日の狼煙を上げ、韓国全域で日本製品不買運動が広がった。

 なかでも最も強硬な反日姿勢を見せたのは、次期大統領の座を狙う李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事だった。

ソウルで行われた反日デモ(2019年8月)©AFLO

「脱日本技術独立」を宣言したが……

 京畿道は人口1300万人を擁する韓国最大の自治体だ。道内の平澤市は、半導体工場があるサムスン電子の企業城下町として知られており、利川市にはSKハイニックスの半導体工場、坡州市にはLGディスプレイの企業団地、また、これらの工場に部品を納める企業の工場や事務所が集まっている。これらの工場は上記3品目のほか、多くを日本企業に依存しており、日本政府の輸出管理強化による影響を最も受ける地域である。

 韓国は日本政府が、韓国をホワイト国から除外した(輸出管理のグループAからグループBに変更した)措置を輸出規制と批判するが、実際には、輸出が不許可となる例はほとんどない。輸出手続きは煩雑化するものの、兵器転用のおそれがない貨物の輸出や技術移転は従来通り、許可されるからだ。

 しかし、知事が反日を掲げる京畿道は19年7月、すぐさま「脱日本技術独立」を宣言し、素材・部品・装備の研究開発を行う地元企業に5年間で2000億ウォン以上を支援する計画を立て、また、韓国の政府機関が2012年に作成した“戦犯企業リスト”に掲載されている日本企業273社の製品を公共機関が購入しないようにする「不買条例」を制定した。