「戦犯企業」を次々と……
実際、昭和電工の子会社である昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)は、京畿道安山市に110億円を投資して新工場を建設した。2016年にSKマテリアルズと合弁でSK昭和電工を設立した同社は韓国内の生産能力を30%引き上げる計画で、10月に稼働を開始する予定である。ちなみに、昭和電工は韓国政府の「戦犯企業」リストに掲載されている。
京畿道に隣接する忠清南道も「戦犯企業」を誘致した。
2021年1月、忠清南道と同道唐津市は、ダイキン工業が韓国半導体製造装置メーカーのシーアンドジーハイテク社と合弁で唐津市松山に工場を新設する覚書(MOU)を締結した。ダイキン工業は、韓国半導体製造用ガス市場で約28%のシェアを持ち、半導体の製造過程で必要なエッチングガス(高純度フッ化水素)を日本や中国で生産して、サムスンやSKハイニックスなどに供給してきた。
4月には半導体材料メーカーの日産化学と子会社である韓国現地法人のNCKも、唐津市松山2産業団地に工場を新設する覚書(MOU)を忠清南道と締結した。NCKは2001年に日産化学が出資して京畿道平澤市に設立した子会社で、半導体やディスプレイの材料の研究や製造、販売を行っている。
ダイキン工業とNCKが工場を新設する唐津市は、SKハイニックスの工場とは100キロ近く離れているが、サムスン電子の企業城下町である平澤市とは川を挟んだ対岸に位置している。なお、ダイキン工業と日産化学も昭和電工と同様、「戦犯企業」リストに掲載されている。
日本企業にとってもメリットはある
日本企業を誘致する韓国の自治体は、地元の雇用を守り、国産化を推進したと主張できる。一方、これは日本企業にとってもメリットがある。韓国がホワイト国から除外されたことで輸出手続きが煩雑になっているが、その点、韓国工場で生産すると、手続きを簡素化できるし、韓国企業の要求に合わせて納入しやすくなるのだ。
また、サムスンをはじめ、日本政府のさらなる規制を危惧する韓国企業が、日本以外からの調達を本格的に進める可能性もある。その点、日本企業が韓国で生産すれば、日本企業に依存してきた韓国企業の第3国からの調達を防ぐことができる。
京畿道をはじめ、各自治体は整備した税制優遇、賃貸料の減免、法務、会計、人事労務、金融の無料相談などのインセンティブを訴求して、日本企業を誘致したい考えだ。
表では反日を掲げながら、裏では“戦犯企業”を誘致する李在明京畿道知事は、現在、次期大統領の最有力候補となっている。