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2021/10/14

 そこから京畿道は、道内企業に20年7月までの1年間に300億ウォンを支援したものの、技術開発は一朝一夕でできるものではない。1年や2年で追いつくことなど極めて難しいし、韓国企業が追いつく頃には、日本はさらに先を進んでいることがほとんどだ。

代替品の獲得に失敗したワケ

 そこで京畿道は、日本を除く国々の企業誘致にも邁進した。19年11月に米国に本社を置く世界最大の半導体装置企業・ラムリサーチ社の誘致に成功、20年6月には世界有数の半導体中古装置流通企業であるサープラスグローバル社を、21年5月には産業用ガスを製造するエアープロダクツ社を誘致するなど、21年5月までに、10社以上を誘致した。

 しかし、結局その戦略もうまくはいかなかった。半導体の製造現場に詳しい、日本企業の韓国駐在員はこう語る。

「仮に地元企業や米国企業から代替品を調達できたとしても、それらを別の素材や部品と組み合わせると、期待通りの成果が得られないこともよくあります」

次期大統領の座を狙う李在明京畿道知事 ©AFLO

 工業技術に100%はなく、コンマ数パーセントの誤差や不純物は避けられない。一つの素材や部品が、それ単体では何の問題もないように見えても、他のものと組み合わせたときに、その「コンマ数パーセントのズレ」によって予期せぬ不具合を引き起こすことは珍しくないのだ。

「日本企業の誘致」という禁じ手

 そうして5年計画で「脱日本」に邁進した京畿道だが、決定的な成果が得られないまま、世界的なコロナ・パンデミックの影響でテレワークが拡大し、また無人化のAIが増えるなど、半導体の需要が急増しはじめた。

 サムスン電子は2020年8月に世界最大規模の半導体工場となる平澤2ラインの稼動を開始し、21年8月には半導体新工場の建設費2兆円を含む23兆円相当の投資計画を発表した。SKハイニックスも1兆円規模の設備投資を行う方針を明らかにするなど、即効性が求められるようになった。

 高まる需要を前に、「国産化の推進」「日本からの輸入を抑制」「地域のグローバル企業を妨害しない」という3つの課題の解決策を模索した京畿道は、ある答えに辿り着いた。日本企業の誘致である。日本企業が韓国内で製造した製品は数字上、韓国製にカウントされ、また、“日本製”の素材や部品であれば「組み合わせの不具合」を心配することなく、そのまま使うことができる。

 サムスン電子とSKハイニックスは、いずれも東芝との提携を通して半導体を製造する技術を得ており、日本から購入した素材や部品で、製品を作ってきた。そんな両社の増産は、日本企業からの輸入増加を意味している。