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 とくに第1章のモネやシスレーの風景画、ルノワールの人物画はとことん目に鮮やか。しばしば印象派の特性として挙げられるのは、ある場面の瞬間を捉えて描いていることや、日常に転がっている親密なモチーフを扱っていること、光が事物にもたらす効果に敏感であること、などなど。それらが相まって「明るさ」が表現されているのだ。

 画面を明るくするための、技術面での工夫も盛んに開発された。印象派が出てくる前の西洋油彩画といえば、たいていはもっと暗くて重厚なイメージがある。描く内容もさることながら、絵具を幾重にも塗り重ねる油彩画の描法が原因だ。色は異なるものを重ねれば重ねるほど、濁って黒に近づいていってしまうのである。

レースの帽子の少女 ピエール・オーギュスト・ルノワール 1891年 油彩/カンヴァス 撮影:古川裕也

揺らめく水の透明感と光を照り返す、蓮の葉の複雑な色合い

 キラキラした世界の輝きを描きたかった印象派の画家たちはどうしたか。色が混ざらないよう、細かい筆致で画面に原色を並べることにした。配分さえ適切にすれば、細かい色の群れは観る側の頭のなかでいい具合に混ぜ合わされて、明るい印象のままさまざまな色が表現されることとなる。筆触分割という手法である。

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 こうした効果やねらいをよく確認できるのはたとえば、印象派の代表的な作例と言っていいモネの《睡蓮》。描かれているのは単なる蓮の葉が浮かぶ池の水面のみ。考えてみれば「これが、何か?」というモチーフに過ぎないけれど、揺らめく水の透明感と光を照り返す蓮の葉の複雑な色合いはなぜか人を惹きつける。ずっとそこで揺らぎ輝き続けていそうに感じられ、いつまでも眺めていられる。観ていると知らず気分が浮き立ち、軽やかになっていく。

睡蓮 クロード・モネ 1907年 油彩/カンヴァス

リアルに絵画を体験してこそ味わえる、至福の時間

 雑事を忘れ、難しい考えは脇に置いて、眼前にあるものをただ陶然と眺める時間は至福だ。

 思えばそうした時間とは、実物と対面しリアルに絵画を体験してこそ味わえるもの。モニター越しに日々のあれこれを済ますことにすっかり慣れてしまった向きには、ぜひ同展へ足を運ぶことを推したい。

 ものごとを実地に体験することの魅力と歓びを、モネをはじめ綺羅星のごときアーティストたちが改めて教えてくれるはずだから。