「優越的な地位にある者が『死ね』といった言葉を使うのは、必要相当以上の精神的攻撃」
T専務はあくまで社内でのハラスメントの事実を否定し、「労働環境に問題はない」と主張した。しかし、ブラック企業での労働問題に詳しい神奈川総合法律事務所の嶋﨑量弁護士はこう指摘する。
「内容が事実であれば、どう考えてもパワハラにあたります。管理職という優越的な地位にある者が『死ね』といった言葉を使うことは、必要相当以上の精神的攻撃といえます。また、スマホを投げつけ、それが身体に当たったのなら、それは身体的な攻撃に相当します。これは業務時間の内でも外でも一緒です。オンエア直前の緊迫した現場で、厳しい言葉が飛び交うこともわからなくはないですが、だからといって個人に罵声を浴びせてもいいということにはなりません。
厳しい言葉を使えば、部下が萎縮してしまい、ミスを頻発することにつながります。個人に負荷を与えるだけではなく、企業にとってもマイナスで、『いい仕事をするためには仕方ない』と考えるのではなく、仕事の質の低下に直結することを企業は学ぶべきでしょう」
編集部が証言のあったハラスメントの事実についてさくらんぼテレビに問い合わせたところ、AさんへのX氏によるパワハラについてこう回答した。
「 本件については当該男性アナウンサーから訴えがあり、社内調査を行いましたが、当社社員の行動に問題はなかったものと考えております。詳細につきましては、相手方代理人と話し合いを行っている最中ですので、回答を控えさせていただきます」
また、ベテランカメラマンのY氏からAさんへのパワハラ行為や、別の女性社員へのセクハラ行為に関してはこう回答した。
「後輩である男性アナウンサーのミスを取材現場で叱責したこと、当該カメラマンと女性キャスターが取材をしたニュースを笑った男性アナウンサーに『仲間が作ったものを笑うのか』という内容のメールを送ったことはございました。いずれも業務上必要な注意・叱責であり、ハラスメントとは考えておりません。一方、過去に女性の体に触れるような行為が判明し厳重注意処分を行ったことはございます。なお、その後は同様の事案は発生しておりません」
Aさんの休職については「重く受け止めている」と語ったT専務だが、会社はハラスメントや過重労働の実態については一切認めない姿勢だという。
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10月21日(木)21時からの「文春オンラインTV」では本件について担当記者が詳しく解説する。
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