「彼は希望を持って山形でアナウンサーに挑戦したはずでした。それなのに、入社してからまだ1か月もたたない時期に先輩社員から『死ね』というLINEが送られてきたんです。彼はその後も新しい職場で一生懸命働いていたのですが、入社3年目の今年、ついに限界を迎えてしまったんです…」
こう語るのは今年4月から休職しているさくらんぼテレビのアナウンサーAさんの知人だ。
さくらんぼテレビは山形県を拠点としたフジテレビ系列の地方局。今年で開局25周年を迎え、地方局としては珍しく中途でアナウンサーの正社員採用があるため、それを目指して入社する人も多い局だという。Aさんも、かつて抱いたアナウンサーという夢に再チャレンジし、見事狭き門を突破したひとりだった。
しかし現在、社のHPに掲載されているアナウンサー7人のうちAさんを含めて2人が休職している。また、2年前には全社員約60人のうち4分の1にあたる15人以上の社員が一気に退職するという異常事態も起きていた。
普通の企業では考え難い状況の裏には、社内で横行するハラスメントの数々があったという。文春オンラインはAさんの知人や複数のさくらんぼテレビ現役・元社員から、局内での過酷な勤務実態の証言を得ることができた。(全2回の1回目/#2を読む)
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自分以外の社員と親し気だったのが気に入らなかった…?
前出・Aさんの知人が続ける。
「Aにハラスメントをしていたのは主に報道部の副部長を務めていた先輩社員のXという人物だと聞いています。アナウンサーは報道の現場に携わる機会が多く、Xと取材することも何度かあったようです。Aは入社後、新しい職場に少しでも早く馴染めるように、先輩社員たちとも積極的にコミュニケーションを図っていたようでした。ところが、Xは自分の派閥を作りたがる性格だったようで、後輩であるAが自分以外の先輩社員と親し気に接していたのが裏切りだと思ったのかもしれません。Aは『深夜に何の脈絡もなく、突然Xさんから『死ね』というLINEが送られてきた』と言っていました」
X氏はもともと新人に対する厳しい指導で知られていたそうだが、Aさんへの態度は傍から見ても異常なものだったという。
AさんとX氏とのやり取りを目撃したある現役社員は、「XのAへの言動は『厳しさ』という言葉ではとても表現できない、理不尽さを感じるものでした。まるでAだけを目の敵にしているようでした」と語る。
「Aは入社してから2~3か月たった頃に『X氏からスマホを投げつけられた』と言っていました。Xが席を外しているときに彼の携帯がデスクの上で鳴っていたのですが、Aは他人の携帯に勝手に出るわけにもいかないので自分の仕事をしていた。するとXが走ってやってきて、スマホを手に取ると、思いっきりAの方に投げつけて『取れや!』と怒鳴ったんだそうです。でも、きっと電話に出たら出たで勝手に出たことで怒ったでしょうし、Aにしてみればあまりにも理不尽な怒鳴られ方です。機嫌が悪いと何をされるか分からないので常に気を張っていなければならず、Aは日々強いストレスを感じているようでした」