10月12日、福井新聞が「寄生虫『エキノコックス』、愛知県で犬の感染相次ぐ 人体に入ると重い肝機能障害」という報道を行い、SNSで大きな話題となった。
エキノコックスは北海道では以前から問題となっている寄生虫で、今回報道された愛知県でも2014年に県内で捕獲された野犬から初めて検出され、以降、県の継続調査で今日までに8件のエキノコックスの陽性犬が確認されている(直近2021年9月の検査では、13検体中のすべてが陰性)。
これまで、北海道で感染した動物が一時的に本州に入ってきたと考えられるケースはあったが、愛知県の知多半島では複数年にかけてエキノコックスが発見されたため、国立感染症研究所は定着に至ったと判断したという。
エキノコックスとはどういう寄生虫なのか、何が問題となるのか、私たちはどのように対処すればいいのか。「エキノコックスの基礎知識」を解説する。
エキノコックスとは何か?
エキノコックスは扁形動物門条虫網に属する、いわゆる「サナダムシ」と総称される寄生虫の仲間だ。エキノコックス属の条虫は現在までに9種が知られており、うち6種は人間にも寄生する。
その中でも、とりわけ「多包条虫」と「単包条虫」という2種は古くから人類を悩ませてきた。どちらも、成虫はキツネやイヌなど主にイヌ科動物の小腸に寄生するが、成虫が産み落とした卵が何かのはずみでヒトの口に入ると、幼虫(包虫という)が主に肝臓などの臓器や器官に寄生してゆっくりと増殖し、やがて機能障害を引き起こす。
「エキノコックス症」というこの疾病は、紀元前4世紀ごろの古代ギリシア医師ヒポクラテスの時代からすでに知られていたとされている。もっとも、自然にできる腫瘍の一種だと考えられていて、寄生虫が病原体だと判明したのは17世紀になってからのことだ。