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 そのため、ヒトは寄生されてからかなり長い間、自分の体内で起こっている深刻な事態に気がつかない。症状が現れて病院に駆け込むころには、すでに寄生虫が臓器を占拠していて手遅れということが起こりうる。さらに、外科手術で完全に切除できなかった場合、取り残した病巣から再び多包虫の増殖が始まってしまう。

毎年約20名の患者、どう対策すればいい?

 国内では毎年20名前後のエキノコックス症の患者が報告されている。患者の発生数だけを見ればそれほどよくある病気とはいえず、過剰に恐れる必要はないが、あなどらず注意はしたい。

 北海道では、患者の早期発見と治療を目的として、各市町村で希望者に血清検査を実施している。幼虫を殺す薬はまだ開発されていないが、幸いエキノコックスの成虫をよく効く「プラジクアンテル」という駆虫薬が存在する。北海道では、これを混ぜた餌を散布して野生のキツネや野犬に食べさせ、それらのエキノコックス感染率を下げるという試みが行われており、一定の成果を上げている。

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 にわかに話題になった愛知県知多半島では、今後もエキノコックスの継続的な調査が行われていく。データを集め続け、動物の感染状況をしっかりと把握することが重要だ。

 私たちが個人でできる対策としては、流行地では外から帰ったらよく手洗いをし、野山の果物や山菜を口に入れるときはよく水道水で洗い、沢水を飲むなら煮沸し、いくら愛らしくても野生のキツネや野犬には決して触らないようにすることだ。

 ペットを飼っているなら、イヌは野ネズミの死がいを拾い食いさせないように、ネコは室内で飼うようにしたい。もし感染の機会があったと思われる場合は、動物病院に相談しよう。そして、これらの行動はエキノコックスの流行地であるかどうかにかかわらず、多くの病原体を私たちの体に入れないために常に心がけておくべきことである。

 私たちがエキノコックスについて正しい知識を持ち、適切な対策を心がけていれば、エキノコックスの感染は予防できる。