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 そうやって、北海道のエキノコックスは、主にキタキツネやアカギツネと、エゾヤチネズミやミカドネズミといった野ネズミの間でライフサイクルを回している。北海道に生息するキツネのエキノコックス感染率は上昇しており、近年ではキツネの40パーセント以上がエキノコックスを保持しているといわれている。

 ちなみに、キツネやイヌだけでなく、ネコも、感染した野ネズミを食べればエキノコックスの成虫に寄生される。イヌの場合はキツネと同様の経過をたどるが、ネコは成虫の発育に適した宿主ではないため、感染性のある卵はほとんど排泄しないとされている。

 また、幼虫はヒト、ブタ、ウマなどにも寄生するが、こちらも幼虫の発育には適さず、原頭節はほとんど形成されない。ヒトからヒト、野ネズミからヒト、ブタやウマからヒトへの感染は起こらない。

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人間が感染するとどうなる?

 エキノコックスの問題は、何かのはずみで虫卵を飲み込んでしまえば、図らずも人間が野ネズミの代わりになるということだ。例えば、流行地のキツネがうろついているような野山で、山菜や野苺を摘んで洗わずに食べたり、生水を飲んだり、野生のキツネを触ったりすれば、エキノコックスの卵が口に入る危険が積み上がり、ヒトも野ネズミのようにエキノコックスの幼虫に寄生される可能性がある。

 ヒトの体内でふ化した幼虫は、主に肝臓に、まれに肺や脾臓、脳などに定着し、臓器をじわじわと浸潤しながら、まるでがんのように増殖し、やがて致命的な機能障害を引き起こす。何もしなければ臓器のほとんどが多包虫の組織に置き換えられてしまい、90パーセント以上の高い確率で患者は死んでしまう。

 多包虫を殺す薬はなく、発育を抑える薬もあるにはあるが効果が一定ではない。最も効果のある治療法は寄生虫を外科手術で摘出することだ。ところが、ヒトの体内の多包虫の発育は遅く不完全で、この寄生虫はヒトの臓器に寄生すると10~20年かけて非常にゆっくりと増殖する。