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逮捕された町長の背中にあったのは…

 ほかにも「ヤクザと選挙」を巡る“事件”は数多く存在する。

 全国の警察本部には暴力団や外国人犯罪グループなどを捜査する部署があり、警視庁には「組織犯罪対策部」が設置されている。通称で「組対(そたい)」と呼ばれているが、組対部内では、暴力団による対立抗争事件や殺人、傷害、恐喝などの事件を「4課」が担当している。

 組対4課は日常的にヤクザを相手にしているため、見た目で気後れしないためなのか、所属する刑事はパンチパーマにサングラス、派手なジャケットなどを着こなしていることも多い。そのため一見すると、「どちらがヤクザなのか?」ということも多々ある。

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 長年、現場で知能犯捜査に従事してきた警察当局の捜査幹部OBが、「極めて珍しいことだった」という特異な経験について振り返る。

「関東地方のある町長が特定の業者から賄賂を受け取っていたという汚職事件について内偵捜査を続けていた。容疑が固まり、町長を逮捕したところ、身体捜検で背中に立派な刺青が入っていた。これには当時の捜査員みんなが驚いた」

 身体捜検とは、逮捕後に容疑者の身体的な特徴を確認することを指す。容疑者を逮捕すると顔写真の撮影、指紋の採取などのほか、全裸までではないが服を脱がせて体の手術痕、傷などの特徴について確認する「身体捜検」が行われる。この手続きで背中の刺青が確認されたということだった。

写真はイメージ ©️iStock.com

 後に分かったことだが、この町長は組織から足を洗った元ヤクザが地方政治家へと転身し、選挙を経て首長になっていたのだった。もちろん元ヤクザということとは関係なく、住民目線の町政の運営を行えば評価をされただろうが、結果的に汚職事件で逮捕されることになってしまった。そのため、刺青が捜査員たちの目に留まることになったのである。

 前出の捜査幹部OBは「長年の経験の中でも、こうした経験はこの時だけだった」と述べている。