「自分以外の人の意見を聞く」ことの重要性
このような図式の中で、本来ならば「あるべき日本社会とは何か」「政治問題において木鐸を打ち鳴らす」的な議題設定能力を担ってきた新聞の機能低下は著しく、ネット社会となり新聞記事の品質と新聞記者の取材能力が引き続き維持できているにもかかわらず、日本人が必ずしも新聞を信頼しなくなったというのは驚きとともに恐怖です。
拙宅山本家も、まあ私が新聞を読むからというのもありますが、子どもたちに新聞を読ませようとしているのも単に「新しい時事問題を知る」だけでなく、その問題についての解説を読み解くことで「自分以外の人の意見を聞く」ことに興味と関心を払ってほしいからに他なりません。ただ、若い人の新聞離れがここまで進んだとなると、自分の意見はあるが、いろんな立場の人たちの意見を聞いて意志決定をするトレーニングをどのようにして積ませれば良いのか、我が子たちを前にして悩むところは多いのです。
新聞は、紙を捨てた後に何を残すのか
何よりも、若い人にリーチしなくなった新聞を作っている新聞産業の人たちが長年の低落傾向を前に悩んでおられたのだろうと思いますが、ついに10代でほぼゼロとなってしまった新聞は、紙を捨てた後に何を残すことになるのでしょうか。海外の事例では、デジタルシフトを鮮明にしてサブスクリプション(月額課金など)に移行して影響力を保っている新聞社も出ていますが、なにぶん、日本の新聞社は巨大であり、事実上不動産業みたいな状態になっている面もあるので、あまり機動的な対応ができないまま衰退が決定的になってしまった印象です。
再生エネルギーにせよ原発再稼働にせよ、イデオロギーとしてしか見ず、産業の転換や社会の変容のところまで読み解けないまま汚染水放流反対と論陣を張った新聞社たちの自業自得もありつつ、とはいえ新聞社が担ってきた「機能」は残っていくでしょうから、その次をどうするのか実に悩ましい局面になったなあと思います。
若い人の読者が「ほぼゼロ」の媒体って、死ぬしかないと思うので。
INFORMATION
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