昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「コロナは風邪か」や「処理水は汚染水か」をめぐる、深遠な争い

昨今いろんなところで政治VS科学の不毛な争いが勃発

2021/04/23

 コロナウイルス感染症の広がりは国難であるかどうか、国民の間でも大きな議論になったまま、1年以上が経過しました。困ったもんです。

 懸念されたコロナ変異種が猛烈な勢いで増えているいま、去年とはまた違った対策が求められています。いままでは無症状が多く感染しても健康への影響は軽微かもしれないとされていた小学生から青年までの年代でも重症化する確率が高く、また、後遺症が残るかもしれないという話が出ると、危機感が募るのも当然です。

 いまでは緊急事態宣言の発令をどうするかという話とともに、再び学校を休校にしようかという話まで出てきました。「緊急」事態なのに、ゴールデンウィークから緊急事態宣言を東京に出そうぜとか、あさってぐらいに大阪で緊急事態宣言でええやろなどと、どの辺が緊急なのかいまひとつよく分かりませんが、とにかく緊急なんですよ皆さん。

◆ ◆ ◆

太平洋戦争末期の大本営にも似た政治状況

 一方で、国民の中ではいまだに「コロナは風邪」と主張し、社会的コンセンサスになっているマスク着用を忌避する人もいれば、感染の場となり得る飲食店への時短営業についても強く反対する論調もよく目にします。科学的、医学的にはコロナウイルスはインフルエンザなどとは比べ物にならないぐらいの脅威だから、経済を止めてでもなるだけ感染が広がらないようにしよう、感染者ゼロを目指そう、という話なんですけどね。

©iStock.com

 海外に目を転じれば、製薬各社が提供するワクチンを国民にどんどん接種し、新たな感染の広がりを抑え込めた国が出てきました。ワクチン接種で先行したイスラエルはもちろん、あれだけ感染者数が激増して国ごと倒れるんじゃないかとまで心配されたイギリスでさえもワクチン接種が広範囲に行えた結果、パブ(酒場)の営業が再開され経済活動が再始動すると活気を取り戻しています。首相のボリス・ジョンソンさん本人までもがコロナウイルスに感染しとって、国ぐるみでお笑いをやっていた時期とは比べ物にならない躍進ぶりです。

 感染症対策を国民の努力で乗り越え、世界的にも少ない死者数で切り抜けてきたはずの日本はワクチン接種数という意味では後進国に位置し、ワクチン開発にも出遅れて、国威の低迷は覆い隠せないぐらい沈鬱な状況になっているのは太平洋戦争末期の大本営にも似た政治状況だからなのでしょうか。

 日本人は手洗いしましょう、マスクをつけましょうという話はすんなり受け入れ、不自由でも頑張って対応できるのに、ワクチン接種のためにファイザー社などとの製薬会社と交渉をしたり、きちんとワクチン接種できるように国と自治体で連携させるなど、高度な政治対応が求められる分野になった途端に思考停止して、科学的に正しいことも政治的な配慮の末に断念するという事例が繰り返されてきました。日本が駄目なのはやはり政治なのだ、ということが浮き彫りになった瞬間です。

 ワクチン開発を支える研究開発費用の捻出に国が後ろ向きだという問題もさることながら、世界的に見てもワクチン開発を担えるだけの大規模な資本力を持つ製薬会社が日本には少なく、開発手法はなんとなく分かっていても、その開発プロセスにかかる膨大な研究予算を捻出することができず、ついに日本オリジナルなワクチン開発を行う決定はできませんでした。科学が政治や社会環境に足を引っ張られて、結果として日本国民全員が少しずつ割を喰い、みんなで等しく貧乏になり、不幸になる日本お家芸の仕組みは健在のようです。