消極的選択として、まあ自民党でいいかと投票した人たち
安倍内閣「支持する」46% 「支持しない」35% NHK世論調査 | NHKニュース
JNN世論調査、内閣支持率5か月ぶりに支持が上回る TBS NEWS
【産経・FNN合同世論調査】内閣支持率47・7% 2カ月ぶり不支持を上回る 改憲議論促進すべきだ61・0% - 産経ニュース
このあたりに、政権批判を繰り返すことによる病理がひそんでいるように思うのです。つまり、政権が腐敗していたり、望ましくない政治をやっているので交代させるべきだ、と野党が考えるのは問題ありません。ご自由にどうぞ。ただ、その政権の行いについて批判し改めさせたり野党のほうが「優れた政治を行えると」主張するべきところを、権威主義だセーフティネット軽視だとレッテルを貼ることで、半分ぐらい支持している国民のこともまた政権と一緒に中間派の支持者ごと「あんな政権を支持している奴らだ」と馬鹿にすることになってしまいます。消極的選択として、まあ自民党でいいかと投票した有権者は、野党支持者から「あの権威主義者の権化のような自民党に投票した馬鹿」と煽られるわけで、頑張って与党批判をした結果、与党を何となく支持した人もついでに敵に回すことになるのです。
これがリベラルを標榜し、リベラルとは寛容であると言ってる側が不寛容にも「自民党支持者は権威主義だバーカ」と批判することになるわけでして、そもそもリベラルの反対がパターナル(権威主義)だ、だから立憲民主党や共産党がリベラルなら、それが打倒するべき対象である自民党・公明党がパターナルであるという分類ではなく、違う軸で比較しないと正しい評論にならないのではないかと危惧するのです。
公明党にいたっては、その存在自体が、宗教団体である支持母体を持ちながら、拙速な憲法改正に反対、安易な消費税の増税に反対、高齢者支援や出生率改善に努力するべきという政策を主張していて、セーフティネット推進側の筆頭のような政党です。そのような政党が自民党と連立を組んでいて与党内野党のようなブレーキ役を果たしていること自体が奇跡というか自己矛盾のような気もしますが、実際そうなっているのだから仕方がありません。ちょっと「リベラルか、パターナルか」という分類で斬れるほど明確な意味を読み解けない政党が公明党だと思います。
政治闘争の巧拙というよりはマーケティング上の問題
このテーマで気になる点は、肝心の左派の側から「この議論はおかしい」という声が上がらない点です。もちろん、自分たちが正義であり、自民党がクソだと言いたい気持ちは分かります。私も自民党を放置すると増長してろくでもないことをするであろうという点で部分的に賛同します。ただ、どこをどう見ても共産党はリベラルが定める寛容からは程遠く、立憲民主党は元民進党であり小池百合子さんの自爆で生み出された産物であって、政党別支持率もようやく11%に乗った程度の存在にすぎません。贔屓にもやり方があるだろうと感じてしまいます。
必要なことは、政権の批判だけでなく、自分たちの政治が自民党よりもこれだけ良いのだと示すことです。平たく言えば、立憲民主党の支持は50代以上の男女に偏り、共産党も若い人の支持は50代以上の半分程度の割合でしかありません。例えば政権批判をしたい朝日新聞が一生懸命「景気回復を実感していない 82%」と打ったところで、その回答者の3割近くが高齢者で年金生活者と見られるならば、景気など実感できる生活をしていない人たちであることが分かるはずです。本当に8割近い国民が景気回復を実感していないのであれば、DI(景気動向指数)が改善することなどないし、有効求人倍率が高まり人手不足になるなんて有り得ないわけです。
この問題を解く鍵は、国民生活に関する世論調査にあります。お前らの生活は充足しているかという問に対して「満足」とする国民の割合が73.9%(前年比+3.8ポイント)と、「不満」25.0%(前年比マイナス3.5%ポイント)を大幅に上回り、しかもさらに改善傾向にあります。まあ、要するに概ね国民はいまの日本社会に満足しておるのです。実はお先真っ暗で将来みんな酷いことになるかもしれないのだとしても。
したがって、いまの政権を権威主義的だ、安倍ちゃんはファシストだと野党が攻撃しても、いまの生活に不満を感じていない人たちには響かないのは仕方がありません。これは政治闘争の巧拙というよりはマーケティング上の問題であって、「野党」という商品には好み(プレファレンス)になる人が少ない、ということに他ならないのです。投票先に悩んでまあ自民党でいいかと投票したような人たちが、左派の議論に膝を打ち「なるほど、自民党よりも良い政治を野党はやってくれそうだね」という同調を引き出すのに必要な議論は別のところにあります。